TrueRy

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのTrueRyのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

久々に自宅鑑賞で号泣してしまった。
母の愛と行動がわかった時に我慢ができなかった。

事故という突然の暴力で最愛の父を失ったオスカー。
9.11は世界、特にアメリカでも忘れがたい日なのだが、彼の中ではテロを受けた日ではなく、その最愛の父を失った”最悪の日”になってしまう。
彼が受けた悲しみ、喪失感、怒り、困惑、やるせなさが交錯する中で、父から受けた教えをもとに、繋がりを消さないために探索の日々が始まる。

彼の心にあいてしまった大きすぎる穴がゆえに、母親にもつらくあたり、父との秘密を胸に抱えるが、穴もその秘密さえも大きすぎて、彼の心が大きく張り裂けてしまいそうになるのが非常につらい。

でもそんな彼の探索を、目に見える形で寄り添ってくれる言葉がでない”老人”、優しく寄り添ってくれる祖母、そして目に見えない形でずっと見守っていた母親。

あまりにも大きすぎた喪失と、そこから癒やされることの困難さ、そして誰にも当たれない原因だからこそ、自身の行動を悔いてしまうという贖罪。その贖罪が受け止められ、そして自身の罪の意識を昇華できたのだが、それは同時に父との繋がりを失うことでもあった。

そんな時に悩みながらも、しっかりと受け止め、彼の探索を全力でフォローしていた母親。ドア越しでしか聞けない、”愛してる”を拠り所に、これからの2人、をしっかりと見据えていた愛情に涙してしまった。

テロ後とはいえ、子供が1人で他人を訪れるのは私も恐怖を感じたが、そこにも母親の愛が届いてたのにはやられた。だからこんなにもフレンドリーで、親身になったくれていたんだな、と。

唯一、祖父と思わしき老人のからませ方にやや消化不良を感じたが、とても、とても心に深く突き刺さる良い作品。人間、誰しもが大小問わず、大切なものを失った経験はあるはず。それが大きければ大きいほど、この作品の愛情の深さ、には共感できるんじゃないかな。

探検のたまものではなかったが、最後に手にしたメッセージと、力強くブランコを漕げるようになったオスカーに幸あれ。
TrueRy

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