蛙

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いの蛙のレビュー・感想・評価

4.5
9.11で最愛の父親を失った少年オスカー。彼にとって世界の入り口であり世界そのものだった存在を失った絶望の中、父が残した「鍵」の正体を探す冒険を始める。

タイトルの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のは一体何か?これは全ての他者性、自分と隔たりがあり理解の外にある全ての世界の事なのだと思います。
冒険を通じて、もがき傷つきながらも、少しづつ他者との関わりや理解を増やしていく。遂には他者の象徴の様な2人からそれぞれ思いがけない事実を告げられらる。
2段階でやってくるクライマックスでオスカーと観客が感じる、驚きと安堵、もがき苦しんでいたのは自分だけでは無かったという事、それは強い覚悟と慈しみに支えられていた事に、涙が止まりませんでした。

これはオスカーが全ての他者性を、自分が変わり、知り、成長する事で受け入れていく話なのだと思います。
同時に9.11以降より深まった、他者間の断絶に少しでも前向きな光を当てる物語なのだとも思います。

最近アメリカでは再度右傾化の候補者が代表選挙に圧勝する絶望もありましたが、この物語をはじめ、前向きな考えは勿論多くあり、その希望に少しでも進んでくれる事を祈りたいです。
蛙