ぬーたん

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのぬーたんのレビュー・感想・評価

4.0
東日本大震災から丸9年の今日。母の実家が福島県で祖父母は既に他界していたものの、家はまだあり半倒壊した。叔母や従妹など沢山の親戚が住んでいて原発から近いこともあり、私も長く心配は続いた。祖父母の家は更地にして売却、建て替えたお墓にはまだ行けていない。その2011年に製作されたこの映画は9.11のアメリカ同時多発テロで父を失った、一人の少年の物語だ。再鑑賞だが、今日に合わせて観ようと思った訳ではなく、この作品に出演した俳優、マックス・フォン・シドーが3日前の3月8日に90歳で亡くなったのを知ったからだ。今作では喋れない役で、その手振り身振りと表情で、気持ちを表現し素晴らしかった。そして大好きな『ゲーム・オブ・スローンズ』では、三つ目の鴉で、重みのある役がまた素晴らしかったことを思い出す。長身でジェントルマン。素敵なおじいさん、俳優だった。
2012年公開当時に観て以来だが、覚えていてもラスト近くは涙で画面が霞んでしまう…。
父役のトム・ハンクスは記憶の中でしか出て来ないが、それがかえって現実味を増している。子供とゲームしたりふざけたりしている姿は自然でぴったり。母はサンドラ・ブロック。流石に上手いが、母としてはちょっと怖い。私生活では色々大変ながら養子を2人迎えるなど子供好きなのかなとも思うけど。主人公の少年をトーマス・ホーン。アスペルガー症候群という役を見事に演じていた。とても素人とは思えないが、出演はこの1作だけ。優秀なようなので学業に専念してるのか、ちょっと残念。
ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライトなど達者が脇を固めてる。そして優しい祖母役のゾーイ・コールドウェルは先月2月16日に86歳で亡くなっていた。
父の遺した鍵に合う鍵穴を探して”ブラックさん”を訪ねて回る、というのが推理もののようで面白い。途中から加わる”相棒”がまた良い。マックス・シドー演じる、祖母の間借り人だ。困った顔も悲しい顔も、何だかズーンと来る。その背景を知った時にはまたズーンと来る。
ラスト近くに知る母の想いと愛と悲しみに、涙が溢れる。訪ね歩いた時にハグしてくれた慰めてくれた”ブラックさん”たちに、そして間借り人に、泣けるよ。つまり、号泣。
ラストシーンもいい。前に前に!
今日は、福島の親戚に電話した。9年、長くて短かったねえ、と言っていた。祖父母の墓参りは来春の予定。
ぬーたん

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