GAKKY

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのGAKKYのレビュー・感想・評価

4.3
2023年 / 再鑑賞

原作を読み終わったので再鑑賞。

正直、読んだ後と読んでない段階では、良い意味でも悪い意味でも感じ方が全然違うと感じる一本。2時間の中に落とし込むには時間が足りない作品だなーとも同時に思った。

原作では、オスカーが9.11で失った父親に近づこうとする旅で出会う人々との関わり合いとか、母の行動や心情とか、祖母と祖父の複雑な関係とかが交差的に描かれていて、最終的に繋がると言うといった感じでしたが、大きくズレてはないものの映画にするために、息子と親の関係に焦点を絞ったものに大きく寄っている。

オスカーがトラウマを克服していく様や、葛藤している様子、そして現実を受け入れて成長する様は見ていて勇気づけられる。そして、この受け入れて前進すると言う事の大変さが痛いほど伝わる。それほど恐ろしい出来事で許されるべきことではない事、そして忘れてはいけない事だと改めて強く感じた。

大切な人を失う悲しみを受け入れていく為に必要な時間は計り知れなくて、感情とか人との関係って本当に複雑で、生きていく意味って誰かと分かち合える喜びや悲しみがあるからこそあるものだと思う。

ただ、見ず知らずの誰かにそれを奪われ巻き込まれるなんて考えただけでも絶対に近い感覚で受け入れられないし、そんな風になるくらいなら独りでいる方が楽だとも感じるけど、独りで得られる幸せの限界値を超越したものを双方に与えられるのが人なんだとも強く感じた。

途中で加わったミスターブラックとの旅が、いきなり祖父との旅に置き換えられてたのは少し残念。祖父の手紙と空っぽの棺こそこの物語で一番重要なシーンなはずなのに、もったいない気がする。

もう21年前の話だとは思えないぐらい時が経ってしまっているけど、まだ今日でも人間は憎しみ合い暴力によってそれらが解決出来るものだと勘違いしている。

原作では9.11を題材にしながらも、自国だけが被害者ではなく加害者でもあると言う意味で、ドレスデン爆撃や広島原爆投下にも触れていたけど、映画では割愛されていたのも残念なポイントでした。
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