ほーりー

次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊のほーりーのレビュー・感想・評価

3.7
見えぇぬ片目ぇに出るぅ涙 森の石松 森のい~しま~つぅ よいぃおぉとぉこぉ~♪

本編では『旅姿三人男』は流れないけれども、とはいえ見終わったあと自然とあの歌のフレーズが脳裏に浮かんでくる。

マキノ雅弘監督による次郎長シリーズの決定版。見えないはずの片目が開眼した石松開眼の一席であり、森繁久彌の最初の出世作となった作品でもある。

十年以上前は本当に観る機会のなかった作品だったけど、本作のDVD化に貢献した鈴木敏夫プロデューサーと尾田栄一郎センセには本当に感謝である。

できれば一作目から順繰りと感想文を書きたかったけど、先にシリーズ中屈指の作品と言われる『第八部・海道一の暴れん坊』だけチョイス。

この作品はこれだけ単品としてもイケる。

戦いに明け暮れし日々も終わり、二度と刃は抜くまいとついに愛刀を金比羅様を納めることを決意した次郎長親分(演:小堀明男)。

親分の代わりに子分・森の石松(演:森繁久彌)が金比羅に行くことになる。

女にフラれてばかりの石松は道中で知り合った浜松の政五郎・通称小政(演:水島道太郎)に恋人とのノロケばなしを聞かされてさらにカッカする。

あまりにカッときたもんで小政に刃を向ける石松。小政も剣を抜くがパッと藤の枝を斬って、花のついた枝を石松の前に出す。

「(彼女の名前が)お藤って言うんだ」

何と粋な展開だろうか。このシーンについては以前、マキノ監督の甥っ子である津川雅彦も凄いシーンだとコメントしていたのを見たことある。その津川さんも今は遠いあの世とやら……。

やがてお使いの済んだ石松が帰り道に女郎屋で美しい娘・夕顔(演:川井玉江)を見初める。

後年の柳吉や社長、そしてテヴィエとは全く違った森繁の顔を見ることができる。

「俺は死なねぇよ 死ね訳には行ねぇんだ」と言って命を散らす森繁石松の姿に固唾を呑んだ。

それにしても小堀次郎長の影の何と薄いことか……。

■映画 DATA==========================
監督:マキノ雅弘
脚本:小川信昭/沖原俊哉
製作:本木荘二郎
音楽:鈴木静一
撮影:飯村正
公開:1954年6月8日(日)
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