大鳥涙

千利休 本覺坊遺文の大鳥涙のネタバレレビュー・内容・結末

千利休 本覺坊遺文(1989年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

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学生の頃は本作よりも勅使河原宏監督作の華やかさのほうが好きだった。三船じゃなくて三国だろうと頭をかしげていた自分が、なんと浅はかだったことか。青二才の映画マニアに過ぎなかったということ。曲り成りにも齢を重ねて、三船である意味、画にも音にも抑制を聞かせている美しさ、歌舞伎のような大きく端正な演技、そういった本作の素晴らしさにようやく気付くことができたように思う。
利休は茶人である以上に武人であり、超然とした佇まいの背景がそこにある。二畳の窮屈な茶室のシーンが力強く胸に迫った。「死」の掛け軸の下、三人の武人=茶人が交わす矜持の交換に、日本人ならではの精神世界を感じた。「死」をもって、利休は侘び寂びの境地に達したのか。桜の花が散る風景は、正に詫び寂びそのものと言われる。冒頭に龍安寺の庭を、そしてこの桜吹雪をクライマックスにもってきた意匠にも今回は感嘆させられた。
利休のように生きることはとても出来ないが、せめて詫び寂びを感じることが出来るような日本人でありたいと思う。

2年ぶりに再鑑賞
あの2畳の茶室の、絵も言えぬ張り詰めた空気感。またまた圧倒された。矜持の持つ力強さが侘びに結びつき、美へと昇華する。好きとしか言いようがない作品。
大鳥涙

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