さく

千利休 本覺坊遺文のさくのレビュー・感想・評価

千利休 本覺坊遺文(1989年製作の映画)
3.5
上映後に奥田瑛二さんのトークショー付き。

キャスティングが千利休に三船敏郎、織田有楽斎に萬屋錦之介と、茶の侘び寂びどころか「ニンニク脂マシマシ」のような濃厚さ。三船さんは年齢的なこともあってか、若い頃のギラギラした感じは薄れていたけれど、萬屋錦之介は溢れ出るエネルギーが凄すぎて、有楽斎は死にそうに見えないのが難点(笑)

本覚坊(奥田瑛二)には、引退話側の我儘上司二人に挟まれて苦悩する中間管理職のような悲哀を感じます(そんな映画ではない)。

以下、奥田瑛二さんのトークショーより。

奥田さん「三船敏郎さんは、ずっと憧れの存在だった。共演できたと言うだけではなく、御子息の史郎さん(長男)から『普段若い俳優を絶対褒めない父が“あいつはいい”と褒めていたと聞いて、それがうれしかった」。

この話を聞いて、これまで映画の画面の中のスターでしかなかった三船敏郎という存在が急に身近な存在に思えてきて、私も全く関係ないのに鳥肌が立ちました! トークショーという限られた空間で語られたことによって、偉大すぎる名優三船敏郎と間接的ながらも接点を持てたような感覚です。

一方、萬屋錦之介さんは、撮影所に10名弱の「取り巻き」を引き連れてきたけれど、熊井監督に「何だこれは⁉️ 次回から付き人は一人にしてくれ❗️」と怒られたとのエピソードが面白かった(萬屋さんは素直に従った)。

また、錦之介さんが奥田さんに向かって「この獲得はバババババ!ってマシンガンみたいな撮り方をするな。映画ってのはライフルで一発バーン!って打つように撮るもんだよ」奥田さん「ライフル?」

どうも、熊井監督は本作を撮るにあたり「アメリカンスタイルで行くぞ」と奥田さんには事前に言っていたようで、これはつまり、1シーン撮って「はいカットー!」みたいな撮り方ではなく、ダーっと長回しで撮ってカット割は編集で行っていくスタイル(私もうまく説明できない)らしいです。

これを錦之介さんは「マシンガンみたいな撮り方」と表現して違和感を持っていたけれど、後には「マシンガンもいいな!」と考え直したそう。奥田さんも「今回がこの撮り方は初めてです」と。

こういういい話を沢山聞いてしまうと、「見る前に聞きたかった!」とも思ってしまった。正直、途中、眠気が…隣の席のおばあちゃんもイビキをかいていた。
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