Sari

アントニオ・ダス・モルテスのSariのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

2021/10/04 名古屋シネマテーク
【奇想天外映画祭2021】

ブラジルの映画運動「シネマ・ノーヴォ」の旗手であるグラウベル・ローシャ監督。
同年のカンヌ国際映画祭監督賞受賞作品。

本作の基となっているブラジル古来の神話“聖ジョルジュ伝説”原題「邪悪のドラゴンと戦う聖者たち」についての説明の字幕が、冒頭1分半の無音オープニング・タイトルバックに流れる。

荒涼たるブラジルの東北部の小さな町。
町の権力者の大地主が、聖女に率いられる邪教的山賊カンガセイロの一団を弾圧するために、呼び寄せられたプロの殺し屋アントニオはカンガセイロの親玉を殺害するが、残虐で狂気じみた地主と若き妻、妻の愛人で政治的野望を抱く警官らの、女を巡る醜い情事と葛藤を目の当たりにし、真の敵に気づいていく、神話的西部劇。

冒頭から渇いた地と極彩色のコントラストに魅了。
『エル・トポ』(1970)『ざくろの色』(1971)より先に制作されている本作、パゾリーニの神秘性が加わったような映像世界が素晴らしい。
民衆たちによる祭りの歌、ブラジルらしいサンバやシンセサイザーなど様々な音の洪水と共に、土着的で異様なまでの狂気の渦に飲み込まれる傑作。


2021-291
Sari

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