櫻イミト

アントニオ・ダス・モルテスの櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.0
1970年、新宿アートシアター(ATG配給)の正月を飾ったブラジル作品。アナーキーなパワーに満ち溢れた革命の映画。タイトルを訳すと「死のアントニオ」。

【物語】
ブラジルでは権力者に反抗する山賊ゲリラ団を総称して”カンガセイロ”と呼び恐れていた。一方で地主から奴隷扱いを受けている農民からはカンガセイロは英雄として扱われていた。そんな中、ある村ではコイラナ大尉が率いるカンガセイロが農民を扇動して地主との対決姿勢を強めていた。地主は対抗するためにカンガセイロ殲滅を生きがいにしている殺し屋、死神アントニオを雇うのだが。。。

農民たちのサンバのような革命歌が歌われる祭りのような状況下で、コイラナ大尉と死神アントニオの対決、アントニオの改心と権力者の打倒が描かれていく。カメラは荒々しくドキュメンタリーの様でもあり、パゾリーニ監督風の神話的世界も感じさせる。同時期の中南米映画といえばメキシコの「エル・トポ」(1970)が有名で、本作と共通点が無いわけではないのだが、「エル・トポ」が理性的アート志向としたら、本作は感性的プリミティブアート志向というか土着的なエネルギーが際立っている。

そのパワーと音楽の表出は、石井聰亙監督の「爆裂都市」(1982)を連想した。
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