安堵霊タラコフスキー

アントニオ・ダス・モルテスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

4.9
ナチュラルにイカれたスウィートスウィートバックを見て思い出した、これまた感嘆するくらいナチュラルに狂った映画。

黒い神と白い悪魔に出てきた殺し屋を一応主役にした作品だけど、やってることは風変わりな衣装で土着的な踊りや儀式を行なったり不思議な問答を交わしたり決闘や銃撃戦を繰り返したりと理解を超えたものばかりで、ブニュエルが可愛く思えるくらいの超現実的展開や暴力的描写の連続にはただただ圧倒されるしかなかった。

カラーになったせいで黒い神と白い悪魔にあった黒澤明の白黒映画の如き渋みと重々しさが減じてはいたけど、その分独特な衣装と土地柄による乾いた毳毳しさが強調されることとなり、結果また一風変わった雰囲気が醸し出されていてこれはこれで良い。

読み解けば結構深い意図があるらしく、試しに断片的な映像からでもその意図を少しでも汲み取ろうとしてみたのだが、演出や画面の質感が独特すぎるせいで見ていると段々そういうのどうでもよくなってきて異常な作品だという気持ちにしかならなくなるけど、これも全て映像の力が凄まじいせいだろう。

この時代は50年代以前や80年代以降と比べても、このグラウベル・ローシャやパラジャーノフ、ホドロフスキーといった具合に頭おかしいとしか思えない映画を撮る監督が多く世に出てきて実に不思議な時代だったとつくづく思う。

しかしこんな映画を作った監督に監督賞を与えてイージーライダーに特別に新人監督賞を与えるなんて審査員も良い趣味してるなと思ったら、審査員長がまさかのヴィスコンティでたまげた。