このレビューはネタバレを含みます
阿蘇山の内輪地区に棲む庄屋のドラ息子と、小作の娘が不遇に結ばれ、不遇な夫婦生活を送る、不幸な『喜びと悲しみも幾年月』。
アカデミー外国語映画賞の候補作。
以下は物語の骨格。
映画は昭和7年から36年までの出来事。
大陸への出兵で右脚を負傷した庄屋の息子・小清水が帰還する。彼は小作の娘さだ子が好きだが、彼女には隆の帰還を待ち侘びている。
小清水はさだ子を呼び出し、力尽くで手込めにする。その直後、隆が帰還するが、さだ子は小清水の家に嫁ぐしかなかった。
公然の秘密として村中に知られるいびつな夫婦関係を反映して長男は、母を嫌った。夫婦は喧嘩ばかり。
隆は結婚するも、彼の嫁を雇い入れた小清水は、手を出そうとする。
農地改革で土地を失い、さらに、家を出た次男は大学紛争にのめり込み、警察に追われる羽目になり、遂に娘は隆の息子と駆け落ちしていく。-------
何度も繰り返されるフラメンコ風のギター弾き語りは、少しアングラ芝居っぽさを加え、独特な味わい。
木下恵介独特の語り口調は冴え、シネマスコープサイズの風景描写を含め、社会の抑圧が厳しかった昭和の男女の特異な愛憎は奥深い。