すずき

フックのすずきのレビュー・感想・評価

フック(1991年製作の映画)
3.6
仕事に追われて家族を蔑ろにしがちな、中年太りの弁護士ピーター。
妻の母親であり、孤児だったピーターの恩人でもあるウェンディ婆ちゃんの所へ里帰り。
彼女は、あのピーターパンの物語のウェンディのモデルとなった人だ。
その日の夜中、ピーターの子供達がフックと名乗る男に攫われてしまう。
そこでウェンディから語られる衝撃の事実!
実はピーターの正体は、ネバーランドの記憶を失い、大人へと成長したピーターパンであった。フック船長は彼との再戦を望んでいたのだ。
半信半疑のまま、ピーターは妖精ティンカーベルと共にネバーランドへ向かう…

スピルバーグ監督による、ピーターパンの物語のその後を描いた作品。
私はディズニーアニメ版ピーターパンの知識しか知らないけど、本作の鑑賞にはそれで十分だった。

本作のネバーランドに登場する子供たちは、ディズニー版と同じくクソガキである。
しかしピーターパンとは、大人になりたくない子供の物語であり、大人に媚びる必要がないのだ。
だからその辺の描写には解釈一致。
でもティンカーベルは、ちょっと物分かりいいし、演じるジュリア・ロバーツは綺麗だけど割と大人だし、もっとメスガキ感が欲しかったかな。

本作は大人になったピーターパンの物語なので、子供よりも大人の方がテーマが突き刺さりやすいかも。
大人になり、夢と飛び方を忘れたピーターパンの姿は悲しい。
しかし、大人になったからこそ手に入れる事が出来た「幸せ」で、再び宙を舞う所には少し感動。
「モーレツ!オトナ帝国」の野原ひろしのシーンを思い出させる。

良くなかったのは、ピーターパンの仲間の子供たちの中から、死人が出てしまう所。
悪い海賊たちをトマトや生卵を投げつけて撃退する世界観なんだから、そこだけシビアにしなくても…。
彼が死んだ事で物語に大きく影響を与えるわけでもない。
死んだかと思ったら、妖精の粉とかなんか便利なアイテムで蘇った、でも良かったのに。
ご都合展開と言われようと、この夢と幻想の物語は、そちらの方が気持ち良く締めくくれたと思う。

あとタイトルにもなっているフック船長の想いも、ちょっと悲しいものがあるよね。
好敵手と決着を付けられず、一方的に去ってしまった世界に残された船長。
ようやく好敵手の現在を知って、こちらの世界に呼び込む事に成功したが、彼は記憶も力も失っていた事を知った時の残念そうな顔よ。
「下手な芝居はよせ!」なんて言って、かつての彼に戻ってきてもらいたがっている船長こそ、ネバーランドで1番ピーターパンの再来を待ち望んでいた人物だと思う。
そこら辺の想いをもっと掘り下げてくれればもっと良かったんだけど、後半有耶無耶になるのが残念。