マヒロ

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラのマヒロのレビュー・感想・評価

3.0
夜の海で突如現れた巨大なタコに襲われた漁船が沈没する。唯一の生き残りの船員は「大ダコの後に現れた謎の怪物に他の人は皆喰われた」と証言するが、その特徴から数年前に人々の前から姿を消した心優しい怪物・フランケンシュタインなのではないかという噂が流れる……というお話。

『フランケンシュタイン対バラゴン』とはパラレルワールドのような関係にあるようで、登場人物は別人だが、研究所で育てられたフランケンシュタインが大きくなり人間の前から忽然と姿を消したことなど、同じような出来事が起きたことが語られるという微妙な立ち位置。ガッツリ続編としてしまうと客が入りにくいとかそういう判断なんだろうか。

見所は何と言っても2体の巨人によるステゴロファイトで、人間たちに育てられ味方となる黄色い巨人・サンダと、あるきっかけで偶発的に誕生し育った緑の巨人・ガイラによる、着ぐるみ怪獣らしからぬスピーディーでアクロバティックな動きはなかなかの迫力。前作のフランケンシュタインは顔以外はほぼ生身の人間のようだったが、今作では毛むくじゃらで野性味の強い容貌になっていて、獣同士のワイルドなケンカみたいな味わいがある。

サンダと違い人間を食料として扱うガイラはたびたび人間を襲うんだけど、空港の襲撃シーンでとっ捕まえた女の人をおやつみたいにムシャムシャ食べるところとかは即物的な怖さで、こういう場面をもうちょっと見てみたかった。
要所要所で良いところはあるが、全体的にはややモッタリとしたテンポで、割と短い映画ながら引き伸ばしみたいなシーンも結構あるのが気になる。例えば人間たちがガイラをレーザー兵器や電気ショックで追い詰める場面は一つの見せ場なんだけど、攻撃を喰らってビリビリしながらのたうち回ってるガイラの様子をやたらと執拗に映し続けるところとか、尺稼ぎなのか単に兵器の描写に力を入れたかったのかは分からないが、とにかく妙に長いので最早可哀想になってくる。

前作に引き続きなぜか特に説明もなく大ダコが出てきたり(今回は割と自然な流れではあったが)、何となく有耶無耶な感じで強引に終わってしまうラストなど雑な感じも否めない作品ではあるんだけど、巨人同士のガチ殴り合いという要素一つで唯一無二の魅力を放っている不思議なバランス感覚の映画だった。

(2021.152)
マヒロ

マヒロ