てるーん

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラのてるーんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

率直に言うと良い所まで行ったものの、イマイチ跳ねきらなかった映画という印象。

冒頭からメインとなる怪獣ガイラが登場し、全編に渡って怪獣が活躍することによって物語が失速しなかったのは好印象。また物語のトピックも、「フランケンシュタインが本当に存在するのか」→「海の怪物は本当に自分たちの育てたフランケンシュタインなのか」→「サンダを本当に殺してしまっていいのか」というように、話が進むにつれ段階的にテンポよく変化していたため、同じトピックで話を進めるのではなく、トピックを発展させてさらなる面白さ・盛り上がりに繋げられていたのは良かったと思う。

さらにキャラクターの描写も丁寧で、スチュワート博士やアケミが何故フランケンシュタイン(サンダ)を庇うのかという点についてもしっかり過去の背景を描くことで説得力を伴っていたし、実際にサンダを助けるために行動を起こすのにも「山中でサンダに助けられたお返しをする」という行動原理が裏付けられていたため、総じてキャラクターの行動に違和感を感じることなく物語を観進められたのは良い点であったと感じる。

またサンダとガイラ双方についてもキャラクターが掘り下げられており、サンダは人を襲うことを良しとせず、むしろ人を助ける善の性質を持っていること、それに対してガイラは自分の欲望のままに人を食らう悪であることが明確に差別化されて描かれ、同じフランケンシュタインの細胞から生まれた怪獣であるものの、その性質は全く異なるというキャラクターの違いをはっきり描けていたのは良かった所。そのため、サンダとガイラの戦いも単なる怪獣同士の喧嘩ではなく、善と悪の戦いという中身を伴っていたため、より感情移入がしやすく、見応えがあった。

特撮についても、話の盛り上がりと同時に舞台も海→山→市街地と徐々にスケールアップしていったため物語後半になるほど見応えが増し、特に終盤の市街戦においては破壊描写も多く、サンダとガイラ、そして自衛隊の三つ巴の戦いが描かれるなど、非常に迫力のある映像になっていたと感じる。

惜しかった点を挙げると、作中の様々な設定が丁寧に回収・処理されていた中で、「何故同じフランケンシュタインの怪獣にも関わらずサンダは山で、ガイラは海で暮らしているのか」という伏線についてはわざわざ台詞として触れられたにも関わらず放置されてしまったのがやや残念だった。
またサンダ対ガイラの戦いが海底火山の噴火によって幕を引くというラストもやや唐突なものを感じ、「サンダを助けたい」という博士やアケミの願い、「フランケンシュタインの怪獣を殲滅する」という自衛隊の意志の両方が結実することがなかった点に無常さを感じ、「人を助けた怪獣を殺してしまってもいいのか」、「フランケンシュタインの細胞を撒き散らし、人間は過ちを犯してしまうのか」などの作品のテーマを成し遂げるどころかむしろ放棄してしまっているような結末に不満を感じた部分もあった。

総じて話運びのテンポも良く、劇中の設定にも丁寧に触れられ、またキャラクターの心理描写や行動原理もしっかりと描かれている所など充実している部分もあったものの、作品内で問題提起されたテーマを思考放棄してしまうという部分もあり、それを差し引いた結果、イマイチ跳ねきらなかった作品、という感想になった。
てるーん

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