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男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.7
寅さん、どこか哀愁感が増した気がする。

《ご長寿の映画》Part.Ⅳ、Vol.23。そろそろ終盤戦としていこう。
『男はつらいよ』シリーズ、第33作目。

もう、冒頭の夢物語のカオス感。
今回は寅さんのその辺の彼のアイデンティティの中でカオス、タイトルも“夜霧にむせぶ”し、何か色々燻るのかな、と。

ここ最近のマドンナは可愛らしいタイプが多かったが、今回は中原理恵。キリッとしてて綺麗な美人タイプ。

彼女もまさかの“風天”やってて、“風天”繋がりでしばしの旅のお供に。

盛岡でのぼるとの再会。いつ以来か。
かつての“風天”の兄弟分。安い宿に泊まってはしがない商売を繰り返す渡世人の辛さを分かち合ったのぼるも所体を持ち、生活感が出ている。

中原理恵の方も“風天”ではあるけど、定職を探して地に足をつけたいという思いがある。

その旅路の途中で何やらワケありの“北海道の根暗”と出会う、佐藤B作。
彼もまた妻に逃げられ、居場所を突き止め、北海道くんだりまでやってきたは良いけれど。

「ねくら、じゃない、さくら、こいつにお茶でも出してやれ」

一方、柴又の団子屋ではタコ社長の娘がついに嫁ぐ。タコ社長の娘、美保純だったのかよ。“タコ社長の娘”を見事に演じ切る。ナイスなキャラクター。でも可愛い。

1人で生きていくこと、そうやって生きたいようで脱したいジレンマ。
しかし、誰かと生きていくことを選ぶこともまた別に楽な道だというわけでもない。

どっちが良いか悪いかではなく、どう生きるのが自分の人生か、そんな人それぞれの葛藤が滲み出る作品だった。

どんな人でも、寅さんでも、色んな想いを引っ提げ出ても暖簾をくぐれば包んでくれるとらやの連中。

渡世人でも生きる上での仁義があってプライドがある。それは渡世人でなくても、どんな人にも、どんな家庭にもそれはある。

寅さんもそれをわかっていて、同じ生き方している人だからこそ口を挟みたくなる。
だけど、寅さんと同じ生き方をしているからこそ、口を挟まれたくなくなる。

似た者同士だから通じ合えるし、わかりあえるが、寅さんと風子は同じ道は歩けない。
今回は同じ道を歩くつもりはなく、むしろ、寅さんが同じ道を歩くんじゃないと優しくそっと“渡世”をする感じが印象的だった。

そして、いつもの別れも、いつものようにはぐらかしたり、旅に逃げるではなく、だからこそケジメがついた感じもこれはこれで良かった。

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TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
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別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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