飯

フラワーズ・オブ・シャンハイの飯のレビュー・感想・評価

3.9
原作の『海上花列伝』は全編呉語白話文(蘇州語)で書かれた小説であり、張愛玲による英語と中国語に翻訳された。
対話が圧倒的に多いこの小説を映画化するには、最も難しいのは言語の部分だろう。蘇州語を話せる俳優が少ないため、本作はそれに近い上海語を導入した。
それにしても、トニー・レオンやミッシェル・リー、そして何名の脇役の上海語はあまりにも酷すぎた。(洪善卿、羅子富の旧上海語と黄二姐の蘇州語はとても良かった)

『悲情城市』でろう者を演じることで閩南語で喋らずに済んだが、今度は上海語で喋らざるを得なかったトニー・レオン。上海語に馴染んでいないせいか、演技はセリフと共に硬くなるのが不思議に思う。言語のおりに閉じ込められたのように。ただ沈小紅といる時、つまり母語の広東語に戻る時だけはいつものトニー・レオンになる。

上海語に関しての違和感が多過ぎたので映像自身に集中することができなかったという。


人像と物像の結合、心像の外化としての物像。物像>人像、人像<動作。形骸でも記号でもない人物をいかにして客体化させるのか。
フェイドインで画面外の空間を表現しなくても、物像と人像の動作は既に時間性のない空間構造を成立させた。なので全編は一つの長回しで構成されたと。視野の限度を強調することで歴史的客観を人間の主観に還元する。

ホウ・シャオシェンを感じたし、中国も清朝も感じたが、上海だけは感じられない。
飯