プリオ

マトリックスのプリオのレビュー・感想・評価

マトリックス(1999年製作の映画)
5.0
間違いなく映画史に残る革命的傑作。これから百年経っても色褪せないだろう。

このクオリティが1999年に作られたというのだから言葉もない。映像、内容が、時代を超越している。映像技術は上がっているものとばかり思っていたが、必ずしもそうではないのか。。。

哲学的要素がふんだんに盛り込まれている。斬新なワイヤーアクションに注目されがちだが、かなり難解な内容。いや、まだ1は理解できるが、2、3と進むごとに難しくなる。

主人公ネオは、この世界は何かおかしい、何か違うと、日々答えを探している。この世界の真実を知りたい。この世の真実、自分の生き方を。そんな姿は、現代に悩む人々の姿と一致する。  


○マトリックスとは? 
空想世界、虚像 
人類を支配して電気に変える世界
真実を隠すため目の前に下ろされた虚像  
支配、束縛の世界
人類は奴隷(囚われの身)   
今見ている世界は、脳の神経回路の電気信号に過ぎない世界

これは、まさに現代社会に通じるものがある。権力者は人々を支配し、金を生み出すモノとしかみない。そんな支配からの脱却がテーマでもある。真実をみて、この偽物の世界から抜け出そうではないか、という熱の入ったテーマもある。

それは、自分の見方を変えるということでもある。世界は、どうせこういうものだ。支配、束縛が前提の格差社会で生きていくしかない。夢や希望も忘れて生きていく。自分の人生こんな感じでいいや、と向上心を放棄した生き方だ。

そんな見方を変える=真実を見て変化する。変化とは、新しい価値観に出会い、それを選ぶこと=赤ピルを飲むことだ。すると、世界が変わる。全てが可能な世界がそこには待っている。  

マトリックスの世界は、仮想空間な訳で、今までの現実ではできなかったことができたりする。自分の想像力、アイデア、応用力、神経回路次第なのだ。マトリックスの世界で、スタミナや筋力は関係ないのだ。ネオがビルとビルの間を飛べなかったのは、今まで生きてきた現実の残像による影響だ。その残像を取っ払う作業、それが「修行」を指す。 

この真実を見る作業は早ければ早い方がいいのだろう。モーフィアスが年齢をいき過ぎると精神崩壊すると言っていた。なぜなら、今まで信じてきた価値観が真実と違うことに心身が拒否反応を示し、自我の崩壊をきたす可能性があるからだ。


○緑トーン:虚構⇄青トーン:現実 
全体的に緑がかった映像や、警察の突撃シーンは、「セブン」を思い出させる。   
 




ーーーーーネタバレありーーーーー





○テーマは、「選択」 
モーフィアス「運命を信じるか?」 
ネオ「人生は自分で決めるものだ」  
ネオの真実を知る前の発言だ。
彼は、選ばれし者ではなかったかもしれないが、選択力はあった。自分で決断する意思。自分を信じて、モーフィアスを助けて、エージェントに立ち向かう意思力。

モーフィアスの信念(ネオが救世主だと信じてる)が共振しネオは変化する。そこにトリニティの愛が加わり、ついにネオは覚醒するのだ。

信念は互いに影響を与え合う。強い信念は人を変える。人は信念を持って生きるべきなのだ。

「マトリックス」は、それぞれの信念が影響し合い、形をかえて奇跡を起こす物語だ。


○救世主であることがわかる=心と体すべてが実感するもの=恋 

最初、ネオは実感できない。だが、人間本来のまっすぐな欲求を取り戻す。強くなりたい。その向上心。強い意志。

本来敵わない相手であるエージェントに立ち向かう姿に、私は泣いた。救世主とは、ニーチェでいうところの「超人」ではないだろうか。
 

○好きなセリフ

・「入口までは案内するが、扉は自分自身で開けろ」
真実を見るのは、自分自身で。他者に教わるものではない。自分で経験しないと意味がない。失敗から学ぶ。他人が1から丁寧に、手取り足取り教えるものではない。

そういうことって、あるよな。

・「無知は幸福」
バカの方が幸せ。余計なこと考えなくていい。別に知らなくても、生きていける。この世界には知らない方がいいこともある。
そんな別の切り口で、マトリックスについて考えさせられる言葉だ。  

・人類は臭くて悪いウイルス。私たちエージェントが治療薬。  
ーエージェントによる洗脳 
支配層がいかにも、口にしそうな言葉だ。私たちも洗脳されないように気をつけよう。 

・「道を知ることと、実際に歩むことは違う」
ーモーフィアス
  

○ストーリーの主軸
規則、束縛のない世界、すべて可能な世界へ→支配からの脱却
弾を避ける→弾を止める
アンダーソン→ネオ 
プリオ

プリオ