つかれぐま

隠し砦の三悪人のつかれぐまのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
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敗軍の将が世継ぎの姫と再興の為の軍資金を同盟国へ届けるべく、大胆にも敵中突破を試みる。「老ジェダイがレーア姫とR2D2を反乱軍に届ける」という世界一有名な冒険譚の元ネタだ。

アクション、コメディ、ドラマ。娯楽映画の3大要素がこれほどバランス良い作品は、古今東西にそうはない。三船敏郎の騎馬戦と立ち回り。黒澤明初のシネスコサイズを活かした群衆シーンの迫力。強欲で小心者という「本当の人間」の姿をした農民コンビが生む可笑しみ。と見所満載だが、この男臭い戦国アクションが、若き姫の成長物語にもなっているところが一番好きだ。

秋月家唯一の世継ぎ雪姫。
ヒロインと呼ぶにはあまりに勇ましい気丈な姫が、身をやつすことで初めて市井の人々の生き様に触れて成長。彼女がやがて名君となり秋月の再興が示唆されるラストに至り、この映画が実は雪姫の物語だと気付かされる。

雪姫は身分を隠すため「口がきけない」ふりを通す。そのため台詞は少ないのだが、囚われた後のいよいよクライマックスで、震えるほどカッコいい言葉を連発してくれる。

「愚かな。これが音に聞く田所兵衛か。人の情けを生かすも殺すも、己の器量しだいじゃ!また家来も家来なら主も主じゃ。敵を取り逃がしたといって、その者を満座の中で罵り打つ。このわがままな姫にも、ようできぬ仕業じゃ」

「姫は楽しかった。この数日の楽しさは城の中では味わえぬ。装わぬ人の世を、人の美しさを、人の醜さを、この目でしかとみた。六郎太!礼を言うぞ。これで姫は悔いなく死ねる」

「ことに、あの祭りは面白かった。あの歌もよい。♫人の命は 火と燃やせ 虫の命は 火に捨てよ 思い思えば 闇の世や 浮き世は夢よ」

「犬死に無用!志あらば、続け!」

日本語字幕(NHK)で観たお陰でこういう台詞の、美しい日本語の素晴らしさが堪能できた。