眠人

囚われの女の眠人のレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
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大富豪のシモンは、恋人のアリアーヌがレズビアン(もしくはバイセクシャル)であり、女性と浮気をしているのではないかと勘繰って、アリアーヌをストーキングし始めてしまう。

海に始まり、海に終わる物語。シモンにとって海は畏敬の対象であると同時に疑念の対象でもあったのかもしれない。相手の全てを知ろうとしても、猜疑心の大波に飲まれて結局関係は崩れ去るだけだろう。そもそも恋愛に限らず他者を所有して管理しようという考え自体が自分勝手で傲慢なんだと思う。相手を自分の思うように扱いたいというシモンの欲望は、相手が眠る姿で欲情するという彼の性癖にも現れている。それは果たして愛なのか。全部知らなくてもいいじゃない。人間は誰しも、自分自身でさえ完全に理解することは出来ないし、管理することも出来ないと思う。他者なら尚更だよ。

状況的には全然美しくなく、むしろ醜いぐらいなんだけど、序盤の静かなストーキングシーンの構図が美しくて忘れられない。作中の暗闇の使い方も効果的で、ほとんど何も見えないショットもあったりした。シモンが抱える猜疑心が肥大化するのに呼応するように闇がその暗さを増していくようでなんだか落ち着かない気持ちになった。
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