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ショーシャンクの空にのfumingのレビュー・感想・評価

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.8
もはや語るに及ばずな怪作。古今東西ムービーのオールタイムベストと謳われるのも納得の出来である。
本作の特に気持ち良い部分は、やはり中盤までのアンディの出世ぶりと、それを裏返すようなクライマックスの二面性であろう。主人公アンディはどん底の獄中生活のスタートから、やがてその能力を遺憾なく発揮してムショヒエルラキーのトップに登り詰めるわけだが、しかし、やがてそれは妙な形で彼の仇となってしまう。だが、そんな我らの星アンディでも敵わないものがあるのかと観客がため息をついた時、劇的な形で本作は終結に向かう。いわば「アンディの獄中のし上がり物語」と「伏線回収どんでん返しトリックミステリー」という、性質の異なる映画の要素が見事に溶け合ったかのような中身であり、さながら一粒で2度美味しい絶品スイーツだ。象徴的なアンディのクライマックスシーンは、まさにアンディと観客のカタルシスが完全にシンクロする至高の映画体験であろう。
また、クライマックスばかり有名な本作であるが、そこに至るまで獄中生活模様も非常に秀逸である。実利主義が当たり前の刑務所で友情を大切にし、育んでいく様子は人間の本質的な温もりを感じられる。また、何事にも冷めたようなアンディが唯一欲しがったものが本や芸術であり、やがてそこに興味や疑問を抱いた他の囚人たちが本当の意味で再教育されていく様も痛快である。作中後、あの刑務所は文字通り米国で最も更正設備が充実した刑務所となったのも興味深い。

総評としては、本当に非の打ち所がない一作だと断ずる。テンポも良く、退屈に感じるシーンもほぼ一切無い。また気持ち良さだけでなく、「施設慣れ」という刑務所生活の真の恐ろしさを描いているところも味わいが深い。やがてレッドが己の罪としっかり向き合う姿も我々の人生の雛形となろう。
希望は誰にも奪えない。そして折れそうになっても、希望を持って進むことの気高さと素晴らしさを本作は教えてくれる。海岸のラストカットは本当に、ただただ美しい。

「鳥籠に閉じ込めてはいけない鳥もいる。羽が美しすぎる」

本作に登場するセリフの一節であり、本当に大好きな一節である。
レッド、あまりにも語彙力が高すぎやしないか。
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