007シリーズ第16作。
ティモシー・ダルトンが”4代目”ボンドを演じた最後の作品でもある。
Mを演じたロバート・ブラウン、マネーペニーを演じたキャロライン・ブリスも本作を持ってそれぞれの役を降板。
主要キャスト陣だけでなく、『ユア・アイズ・オンリー』から5作連続で監督を務めたジョン・グレン、第1作『ドクター・ノオ』から脚本を務めたリチャード・メイボームも本作を持って007シリーズから一線を退くなど、シリーズ全体の転換点とも言える作品である。
✏️復讐の鬼
本作最大の特徴は、過去作のようにボンドが組織から与えられたミッションを遂行するわけではなく、ほぼ「私怨」とも言える動機から敵対組織と戦う点。
ボンドと親交の深いCIA所属のエージェント、フェリックスとその妻が、中南米の裏社会を牛耳る麻薬王・サンチェスの手先に襲われるところから物語は始まる。
その結果、妻は命を奪われ、フェリックスは左足を失う瀕死の重傷を負ってしまった。
これに復讐の炎を燃やすボンド。
通常の任務に戻れ、というMからの命令を無視し、組織を辞職する覚悟で単独行動に打って出る姿は、今までのクールで情に流されないボンドのイメージがいい意味で崩れた。
物語終盤では、サンチェスとの激しい戦いの影響でスーツは破れ、顔は傷と血だらけのボロボロの状態。
ここまで満身創痍のボンドの姿は大変珍しいし、シリーズ初ではないだろうか…
世界を股にかけるスパイにも、人間臭い部分がある。
✏️現場も行けるぞ
個人的に嬉しかったのは、ボンドが所属する組織のメカニック担当・Qの大活躍。
過去作においては、組織のラボにて自身が開発したガジェットの機能をボンドに説明することが主な役割だった彼だが、本作では見事(?)現場デビューを果たす。
組織を半ば脱退した状態で、国をも動かす巨大麻薬カルテルに一人立ち向かう孤立無援・四面楚歌のボンドをバックアップする。
新たに開発したガジェットを手渡すだけでなく、ドライバーや連絡係、ボンドガールへのさりげないフォローまでしっかり担当。
どこか現場業務を楽しんでいるようにも見える彼の姿がまぶしい。
✏️クール路線継続
本作もクールで硬派なスパイ・ムービーとのしての路線は継続気味で、ロジャー・ムーア時代のようなコミカルさはほとんど姿を見せない。
また凄惨な死に際を迎える登場人物も多く、本作はシリーズ初のPG-13指定を受けている。
敵対組織の人物による「裏切った・裏切らない」という人間模様が少々わかりづらく感じる場面もあり、こいつ誰だっけ…?となる瞬間もちらほら。
☑️まとめ
泥臭く戦うボンド、美女二人とのロマンス、そしておじいちゃん…もといQの活躍が楽しい作品。
劇中にてボンドが持つ「殺しのライセンス」は一時剥奪されたが、どうやら一連の事件での功績が認められてかライセンスの剥奪は免除された模様。
本作公開後、イオンプロとMGMによる法廷闘争のイザコザがあり、続編制作開始まで5年の空白期間が発生してしまう。
そして次作『ゴールデンアイ』にて、6年間所持者が不在だった「殺しのライセンス」は、今もなおスター俳優として表舞台に立ち続けているピアース・ブロスナンへと引き継がれる。
<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★★☆
🥲感 動:★★★☆☆
📖物 語:★★★☆☆
🏃♂️テンポ:★★★☆☆
🎬2023年鑑賞数:4(1)
※カッコ内は劇場鑑賞数