ジュライ

海の上のピアニストのジュライのレビュー・感想・評価

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
3.8
観てる最中、ずっと『オペラ座の怪人』を思い出してました。
双方、音楽に関して天賦の才を持ちながら、たった一つの場所でしか生きられない者を描いているからかな。時代を前後しながら描いてるのも一緒だし、印象的なシャンデリアも出てくるし。
ただ、あちらは豪華絢爛な光と惨憺たる闇のギャップが顕著なのに対し、こちらはとにかく静か。ふんだんに音楽が使われてるのに、それでも海底みたいに常に薄暗くてトーンが一定に保たれているという印象。

純粋で世間知らずっぽいような、でもどこか深い卓越した見識が浮かんでいるような、ティム・ロスのビー玉のごとき瞳がこの役にピッタリ。
戸籍も住民票もない人間に向かって、たとえ100%良心からにせよ、船を降りろ降りろとそそのかすマックスにはハラハラしましたが。

結末は、ま、ああするしかないだろうなという感じ。
船を降りて俗物と化していく1900なんて誰も見たくないだろうし、でもあの清廉な魂は船の上でしか維持しきれないだろうしね……。
ジュライ

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