とぶとかげ

フィッシャー・キングのとぶとかげのレビュー・感想・評価

フィッシャー・キング(1991年製作の映画)
3.8
大人のおとぎ話であり、歳だけくって中身は調子に乗ったガキである男(ジャック)の成長物語でもあり。ジャックは聖なる愚者(パリー)と出逢うことで自らの愚かさと弱さに気付き、向き合い続けることで最後に赦しとお姫様を得る。そういう意味では王道中の王道な物語なのだが、そのモチーフがえげつない(←ほめてます)。資本主義の暴力性が剥き出しになった挙げ句の果ての貧富の格差、生産性のない者は死んで当然とばかりのホームレス狩り、そういう社会で(おそらく)生きづらさを抱え、拡大自殺とも言える無差別殺人に走った男と彼が残した傷痕の惨さ…(再現シーンのリアリティーがまた容赦ない)え、これ今の日本の話?と思わず公開年を見たら1991年。ああ、32年経って日本もアメリカに(悪い意味で)追い付いたんだな、と感じた。そういう意味でも今「午前10時の映画祭」で上映された意味は大きかったと思う。観られて良かった。