けーはち

キング・コングのけーはちのレビュー・感想・評価

キング・コング(2005年製作の映画)
4.0
超有名モンスター映画のリメイク。ピーター・ジャクソン監督の愛が重すぎて長い長い3時間超えの映画に。特別版は何と200分(長ッ!!)、ダルい、まとめきれていない、詰め込みすぎと取るか、はたまた贅沢で充実していると取るか……いずれの印象もある。

★大恐慌時代のアメリカで、一発勝負に出た映画監督のカール・デナム(ジャック・ブラック)は、女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)や脚本家ジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)を口車に乗せて未踏の秘境・髑髏島へ連れ、映画を撮ろうとする。そこには島民から恐れられる、巨大なゴリラ、キング・コングが棲んでいた。

★200分の尺は1:2:1で出航編、髑髏島編、NY編にキチッと分けられ、全体のミッドポイントにT-REXとコングの格闘シーンがドンと据わる。全体を見れば何とも均整の取れた映画だが、長尺でツラさが先に来るのは間違いない。

★映画監督カールがある意味主人公と言える印象深いキャラ。彼は異常な信念の男で、映画黎明期から映画制作にすさまじい情熱を抱き、そのためなら罪も他人の死も何ら厭わなかった。けれども、彼はキング・コングに出会った時からその確保に心を燃やすようになり、ついにはコングを捕らえ「見世物」を行って、富を得るようになる。その結果「愛するものを破壊せずにはいられない」と言われてしまうのが印象的だった(監督自身のメタ言及とかは考えないでおこう)。

★髑髏島への航海は海洋冒険ロマンのノリだが、そこから一気に恐竜や巨大昆虫・爬虫類・肉食植物の間で生き抜くモンスター映画に早変わり。少なくとも「ジュラシック・ワールド」が出てくるまで映画史上最強の恐竜描写と言って良い。T-REX三頭を相手に回してのキング・コングの立ち回りは、世界最高峰と言えるCGで描かれるイキイキした活劇。必見。

★アンとコングの関係は非常にユニークな描き方がされている。「元々喜劇女優だったアンが、コングに喰われたりしないよう、機嫌を取るために舞台で鍛えた曲芸を観せたりしているうちに、互いに情が湧いてくる」という、言うなれば、囚われの身になったペット(人間)が、生き残るために主人(コング)の歓心を求める関係を基点とする。コングは当初それこそ愛玩動物をいじくるようにアンのことを指でつつき回すようになるが、それすらコングの指でやられるとノックアウトものだから、アンは「やめて!」と咄嗟に咎め立てる。そこでコングは割と素直に、彼女の言うことを聞き入れ、スネてしまう(そこら辺の岩に当たり散らす)のが面白い。この瞬間に彼らの関係は、ある意味で対等になったんだと思う。

★NYでコングが脱出してからアンと邂逅するシーンの画はまるで運命を思わせる劇的なライトアップだし、二人で氷上をすいすいと滑るシーンは恋人同士を思わせるロマンチックさすら感じる。それからキング・コングは死に至るまで徹頭徹尾アンを守り続けることになる。まさにモンスターのロマンス劇。「野獣は美女に殺された」とカールの言葉に締め括られるシーンはグッと来る。

★長く膨らませた分、シナリオ上には難点もある。コングとアンが上記のように仲良しになってしまった結果、アンを助け出す役割のジャック・ドリスコルは終盤、要らないキャラになってしまった(そうでなくとも、独力で彼女を助けようが無いのだから、わざわざエンパイア・ステート・ビルに上る意味はなかっただろう)。髑髏島で冒険する中で怪生物たちにやられていくモブ船員たちの掘り下げエピソードは大体蛇足。さらに、T-REXと渡り合うモンスター性もさることながらアンとの関係で人間臭さを押し出したキング・コングを描いてしまったため、NYで人をグッチャングッチャンに殺すこともできず、結果終盤になればなるほどモンスター・パニックとしてはもう一つ物足りない感じなのも事実。むろん単純に長過ぎるだけでも娯楽映画としては大きな瑕疵だ。

★なので、本作の総論は後半2時間分ぐらいの「すごいCGの怪獣・恐竜・巨大動物映画!」という話に終始する。恐竜含む巨大生物たちのイキイキした活劇は、本当に良かった。「ジュラシック・ワールド」にコングを出して欲しかったぐらいに。