こたつむり

乱歩地獄のこたつむりのレビュー・感想・評価

乱歩地獄(2005年製作の映画)
3.7
全身、乱歩まみれになる…すなわち、地獄。

いやぁ。全力でおススメできない作品でした。
江戸川乱歩先生の中短編から珠玉の四本を映像化しているので、連続ドラマのように鑑賞できるのですが、どれもこれもが、エロでグロで気分が悪くなること間違いなし。

しかも、全て尖った映像ばかりですからね。
理屈と倫理観がグチャグチャにされることは必至。一本鑑賞するごとにインターバルを置いて正解でした。

『火星の運河』 ★★★
竹内スグル監督作品。尺が短いので『乱歩地獄』の序章としてはベスト。不安を煽るような前衛的な映像は、この先に拡がる阿鼻叫喚の光景を予告しているようで…鬱になります。

『鏡地獄』 ★★★★
実相寺昭雄監督作品。相変わらず才気迸る御方ですね。物語としては“ひねりが無い”ミステリなのですが、それでも惹き込まれるのは監督のセンスならでは。不安と狂気を心の奥から引き出され、それを眼前に繰り広げられると…ただただ吐き気を催すだけです。

それでも、浅野忠信さん演じる“髪が長い明智小五郎”が、ちょっと笑えるのが救いでしょうか。それと市川実日子さんがチョイ役で出演していますが、見事な色気でした。サバサバした役が印象深い女優さんですが…いやぁ、そんな顔もするのですねえ。

『芋虫』 ★★
佐藤寿保監督作品。正直なところ、実相寺監督の作品の後に観ると、見比べてしまってツラいものがありますね。しかも、原作から大幅なアレンジが施されていますが…《明智小五郎》と《怪人二十面相》を出す意味が分かりません…。ある意味、本作の中では箸休め的な存在。

『蟲』 ★★★★★
カネコアツシ監督作品。問題作であり衝撃作。コミカルな部分(ブリーフ姿の浅野忠信さん)もありますが…ゴメンナサイ。この作品を笑い飛ばすのは無理です。監督さんの本業は漫画家…ということで、本作以降、映画に携わっていないのは残念な限り。

また、タイトルにもあるように本作は“蟲”の物語。ぞわぞわした映像が嫌いな人は絶対に観ない方が良いです。免疫があっても(僕も少ない方ですが)気分が悪くなるのは確実。

まあ、そんなわけで。
先にも書きましたが全力でおススメしません。また、どの作品も原作を大幅に改変しているので「あの怪作が映像化!」という気分にもなりません。しかし、心に大きな爪痕が残したいならば、本作は見事なまでにトラウマとなってくれるでしょう。うげぇ。
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