大道幸之丞

悪魔の手毬唄の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

悪魔の手毬唄(1977年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

横溝正史と角川書店が(1976年〜1981年)に「メディアミックス戦略」として文庫と併せて映画を制作するアクションは当時大変話題になり文庫本と映画は大ヒットした。

その中でも横溝正史作品の映画化は1976年から『犬神家の一族』から6作続いた。私は石坂浩二の金田一耕助が好きで『犬神家の一族』が良かったことから本作を鑑賞した。

このシリーズの良さは我々日本人が、焼き魚には迷わず醤油をかけるように、日本人なら誰しもその感覚がある山陰の僻村の因習深さ、人間関係の複雑さ、江戸、明治大正、戦争を挟んでからの昭和の時代に渡る日本の歴史によって影響を受けた慣習などがべっとりと張り付いた中で物語が進行するので、多くの説明が要らない。

予算——というより徹底したキャスティングは完璧で、セリフも洗練されており、会話のそこらに謎を解く鍵が隠れていて、聴き逃がせない。そこで起こる殺人はどれも奇っ怪で普通ではない。それにより犯人をより恐ろしい想像だにしない人物に憶測してしまう。

そんな空気の村へ人を食ったようにとぼけた印象のある金田一が登場する。それは狡知な人間には苛立ちをあたえ、知に長けたものは軽視する(そこに盲点が発生するのだが)

今回は2つの実力者が拮抗する中に戦後の混乱期に『恩田』となのる詐欺師が村に「儲け話」として「モール作成」の機器を売りつけ、製品を引き取るというビジネスモデルを提案し、しかしやがて失踪。その間に数名の女と関係をもちその度に子を設けるが全て秘匿にされている。

その恩田は肚に据えかねた青池源治郎が怒鳴り込みに行き返り討ちに遭い殺されてしまうが、しかも顔面を焼き尽くされ正体も不明な遺体になっていた。

その妻が金田一が世話になる温泉宿「亀の湯」の女将青池リカ(岸恵子)だった。

息子の青池歌名雄(北公次)が結婚をしたがっていた由良泰子(高橋洋子)が村から出て歌手として成功した「大空ゆかり」こと別所千惠(仁科明子)が帰還すると宴席を準備しているさなかに滝つぼの下で奇妙な格好で絞殺される。ここから同級生であった女性の連続殺人が起こるが、泰子の祖母・五百子は村に古くから伝わる手毬唄を金田一らに「聴かせたい」と歌うが、その歌詞の内容が連続して起こる殺人そのものを歌い上げている事を理解し金田一が謎解きに入る。

結局、青池源治郎は恩田 幾三そのひとの変名であり対立する両家の娘の子をつくり村に合計4名腹違いの子を作っていた事が発覚する。

結局この2家の対立に恩田が火に油を注ぎ、跡目相続や自分の子可愛さが絡み合い青池リカが連続殺人に走る。

次々に提示される「謎」とそれらしく「ヒント」が次第に集まり、当事者全員が集まる場で金田一は「謎解き」をするのはいつものパターンだが、その人間の置かれた状況や人間の業が今回の悲劇を織りなしている。

とにかくしっかり構成されており、美人美男がキャステングされ、そこでの興味を惹いておき、飽きられないタイミングで殺人が起こりリズムがいい。
143分という長尺だが、それを感じさせない。

普遍的な人間模様がそこにはあり、当時の大衆が支持した理由もわかる気がするし我々日本人ならその感覚が体の何処かにあるように思え誰にでも楽しめる作品と言える。