さらば夏の光を配信している動画配信サービス

『さらば夏の光』の
動画配信サービス情報をご紹介!視聴する方法はある?

さらば夏の光
動画配信は2024年4月時点の情報です。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
本ページには動画配信サービスのプロモーションが含まれています。
目次

『さらば夏の光』に投稿された感想・評価

『トーキョーノーザンライツフェスティバル』にて久々の再見(満席、立見も出た盛況ぶりでした)。何で吉田喜重で北欧なのかと言えば本作の舞台としてスウェーデンとデンマークが登場するから&制作から今年で50年だから、だが前者についてはいささか強引な気がしないでもない(笑)。話の大半はパリ、ついでリスボンだし。

これ、元々割に好きな作品ではあったのだがやはり50年前という時代と吉田の世代をもろに感じさせるような内容だなぁ、と思いましたね。横内正演じる川村は学生時代に長崎の寺院で見た教会の写生図のあるかどうか分からない「本物」を探しにヨーロッパを彷徨っていて、その中でポルトガルはリスボンで岡田茉莉子演じる鳥羽直子という人妻と遭遇、恋に落ちる。実は直子の生地も長崎で、そこで母親と弟を失ったという体験があるが、それを忘れる/なかったことにするためにヨーロッパにいる。もう日本には帰らない/帰れないとの決心。いかにも観念的な2人の会話、相手に話しかけているような文体ながらモノローグであるという設定の多用。メロドラマ的な体裁を取りながらもメロドラマを脱臼させる力が常に働いている。くっつきそうでくっつかない。くっついても離れる(これ目当てだった当日の吉田喜重と岡田茉莉子によるアフタートークで、吉田は傑作『秋津温泉』について「反メロドラマ」だと言っていたが、本作もJALからの依頼作品だとは言えこの吉田の「反」への指向性が如実に出ている。小津安二郎を考えるに際して外せない吉田の名著は『小津安二郎の反映画』だ)。

ここで川村が探している教会というのは西欧的なアイデンティティであり自我のことだろう。直子は「男の人はいつも何かを探しているのね。私は過去の記憶をたまに思い出すだけだわ」みたいなことを言う。悟性とロゴスで世界を認識する枠組みを必要とする男、より自由な女の対比。あるいは全能の神と卑小な人間のそれ(川村と直子はスペインのとある道で姦通した妻を刺した男と義妹の言い争いに遭遇する。男は言う、「姦通した妻を許せない。真実は神様が知っている」)。この対比は今見ればいかにも図式的なんだが、先述したアフタートークで吉田は「当時は男尊女卑の思想がまだあったんだが、自分は女性を称揚する作品を撮った」(大意)と語っていて、やはりそういうことだよなあ、と。見下すと同時に畏怖と憧憬の対象たる女性。「私にとっての寺院はあなただった」と川村が直子に言う時、ここにロマン主義的思考の残滓を感じ取ることは難しいことではない。この男女にとって共通する記号である長崎と寺院。男はそこに拘泥し、女は忘れる(忘れようとする)。レネ&ロブ=グリエの『ヒロシマ、モナムール(24時間の情事)』と『去年マリエンバードで』と非常に似たテイストの作品だとも再認識した。やっぱ影響受けるもんなんだろうな。

まあ理屈はともあれ非常に美しい作品で(モンサンミッシェル、そしてリスボンの白い町並み。ローマやアムステルダム、マドリードも登場します)、それはロケーションと共に撮影の素晴らしさによるところ大。度々流れるセンチメンタルなピアノ音楽は少し恥ずかしいが、時代性と内容を考えれば納得。一柳慧のモダンチェンバロを用いたいかにもゲンダイオンガクみたいな不安な情緒を醸し出すヤツが良い。微妙なむず痒さはあれど依然好きでした。
ヨーロッパ各地の街並み、哲学的対話や呟き、ロングショット、森英恵の服飾、
愛そのものに激しく反抗する愛
吉田喜重の作品で、もしかしたら一番好きかもしれない映画。

アラン・レネの影響がめちゃくちゃあるだろうことが容易に想像できる格調高い映像が抜群に素晴らしく、尺がそんなに長くないこともあってその美しさを堪能しているだけであっという間に終幕まで時間が過ぎてしまった。(それこそかの傑作「去年マリエンバートで」が如く!)

後年マルグリット・デュラスが作るようなシーンも多数見られるけど、改めて考えてもそんなヨーロッパ的な美の境地に日本人が到達していたっていうのは驚異的。

『さらば夏の光』に似ている作品

変奏曲

製作国:

上映時間:

110分
3.3

あらすじ

学園闘争の同志で元恋人の森井に偶然パリで再会した人妻・杏子。森井は追放同然で日本を離れ、今もなお国際的政治組織に加担していた。杏子は森井と一夜を共にするが、彼は心を摩耗し不能に陥っていた。…

>>続きを読む

ベルイマン島にて

上映日:

2022年04月22日

製作国:

上映時間:

113分

ジャンル:

3.6

あらすじ

アメリカからスウェーデンのフォーレ島にやってきた映画監督カップルのクリスとトニー。創作活動にも互いの関係にも停滞感を抱いていた二人は、敬愛するベルイマンが数々の傑作を撮ったこの島でひと夏暮…

>>続きを読む

秋津温泉

上映日:

1962年06月15日

製作国:

上映時間:

112分

配給:

  • 松竹
4.0

あらすじ

男と女、美しい四季を背景に描かれる妖しい情念の戯れ――― 戦時中生きる気力を無くした青年は、死に場所を求めて秋津温泉にやって来た。しかし彼は結核に冒され、自殺する事もままならずに温泉宿で倒…

>>続きを読む

新宿泥棒日記

製作国:

上映時間:

97分

ジャンル:

3.5

あらすじ

新宿駅前で街頭劇を行う唐十郎。青年が紀伊國屋書店に入っていき、万引きで女店員に捕まる。青年は鳥男、女店員はウメ子。一方、酒場で性談義をする大鳥組の俳優たち。新宿の不穏な熱気は混沌と幻想を呑…

>>続きを読む

関連記事

【2月開催】国内映画イベントまとめ「映画」+「好き」が詰まったイベントが目白押し!