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コンドルのCinemanのレビュー・感想・評価

コンドル(1939年製作の映画)
4.0
『コンドル』
ハワード・ホークス監督
1939年アメリカ
鑑賞日:2023年3月7日 U-next

南米の小さな港町を拠点にしてアンデスの険しい山々をぬって郵便物を輸送するパイロットたちと彼等を支える整備士たち。
山の絶壁に建てた監視小屋でだた一人天候を見つめている監視員。
彼らが日夜たむろす酒場の一角に立ち上げた航空会社で飛行計画の総指揮をするケイリー・グラント。

「流れ者に女はいらねえ女がいちゃあ歩けねえ」は鈴木清順監督の傑作『東京流れ者』の渡哲也アニイの名セリフですが、
命をかけた男の仕事場に女は近寄るねえ!という男臭さムンムンの世界を描いたのが本作品です。
役者、アンデスの地形、男臭い物語の展開すべてにワクワクできること請け合います。
切なくて涙する映画は何本あれどホコリと油まみれのババッチイ男達の熱い絆と友情に涙してしまう映画はこの作品しかない。

【Story】
ニューヨークのショーガール、ボニー・リー(ジーン・アーサー)は南米での巡業を終えてパナマへ帰る途中、舟が給油のためにエクアドルのアンデス山中にある小さな港町バランカに停泊した。
ボニーは夕方の出港まで時間があるので散歩がわりに歩きその街唯一の酒場に入った。

酒場の奥には郵便運搬航空会社があり酒場はパイロットたちのたまり場として賑わっていた。
ボニーは目の前で命がけの仕事に没頭するパイロットたちに驚き、
総指揮をとるジェフ・カーター(ケーリー・グラント)に強く惹かれて夕方の船を見送り次の船が来るまでの1週間その街に留まることにした。

翌日新しく雇われたパイロット、バット・マクファーソン(リチャード・バーセルメス)が加わった。
しかしマクファーソンが、以前同乗した機関士を見捨てて見殺しにしたことのある悪名高きキルガロンだと知るとパイロットたちは猛烈に反発する。
見殺しにされた機関士はこの航空会社のベテラン・パイロットのキッドの弟だった。
キッドはキルガロンを激しく憎んでいる。
キルガロンが連れて来た新妻はジェフのかつての恋人ジュディ(リタ・ヘイワース)だ。
ボニー、ジェフ、バット、ジュディ、キッド、複雑に絡み合った人間関係の中で事件が起こる。

嵐吹きすさぶアンデス山中をセスナのように小さな飛行機が木の葉のように吹き飛ばされながら郵便物やニトログリセリンを命がけで運搬する男たちが・・・。

【Trivia & Topics】
*激しいやりとり。
険しいアンデスの断崖絶壁に建てられた小屋にたった一人で勤務する天候監視員。話し友達はロバくんだけ。
刻々と変化する山頂の天気を本部に電話で報告する監視員とそれを参考にして飛行するかしないかを決めるジェフとの対話もスリリングだ。

*リタ・へイワース。
脇役で映画に出演していたが泣かず飛ばすだったへイワースは本作品で一気に注目を浴び1940年代ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれるようになりました。

*見事な飛行シーン。
暴風雨の中をニトログリセリンを積んで運搬するシーンを始めとして険しいアンデスの山沿いを目視とカンだけで飛行するスリリングなシーンや着陸に失敗して飛行機が炎上するシーンなどもリアルに描かれています。

*表か裏か。
金貨を放り投げて裏か表で街に残るかニューヨークに帰るかを迫られるボニーとジェフとのコイントスの結果は・・・。

*初代刑事コロンボ。
本作品で目を引いたのがジェフの片腕のキッド役トーマス・ミッチェル。
寡黙ながらもボソボソっと皮肉とユーモア混じりのセリフを口にするミッチェルはこの作品の得難いアクセントです。
1962年の舞台「殺人処方箋」で犯人を追い詰めるコロンボ刑事を演じて主役のジェゼフ・コットンをしのぐ人気ぶりでした。
残念ながら「殺人処方箋」のテレビドラマ化「刑事コロンボ」が企画された頃にはミッチェルは死去していましたのでピーター・フォークが抜擢されました。
トーマス・ミッチェルのコロンボも見たかったですね〜。

【5 star rating】
☆☆☆☆☆
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