不在

修道女の不在のレビュー・感想・評価

修道女(1966年製作の映画)
3.8
家族に捨てられ、半ば強制的に修道院へ入れられてしまった主人公シュザンヌ。
そこでは顔しか見えない修道服によって個性を奪われ、神の名のもとに人々は画一化される。
過酷な環境の中、心から神を愛し、ひたむきに聖書を信じ続けるシュザンヌだったが、修道院の教えに従わないことを理由に周囲から異端とみなされ、厳しい罰を受けてしまう。
そんな彼女の抵抗が実を結び、別の修道院へ移ることになるが、新たな形の支配がシュザンヌを待ち受けていた。

シュザンヌは自分だけの自由を求め続けた。
一つ目の修道院で人から求められない苦しみを、二つ目の修道院では求められる苦しみをそれぞれ経験したが、そのどちらも他人の自由を奪う干渉という行為によって引き起こされた。
この時代の女性に干渉なき完全な自由などあっただろうか。
シュザンヌを罵り、虐げた修道女たちも、外で洗濯をしている女性達も、心から自由とはいえない。
結局は男から支配され、隷従させられている。
それに気付いたシュザンヌは、窓から身を投げる。
神を信じるが故にもがき苦しむことになった彼女の亡骸は、皮肉なまでに美しい十字架を描いていた。
不在

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