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日本侠花伝のyusukepacinoのレビュー・感想・評価

日本侠花伝(1973年製作の映画)
3.5
まず、私は加藤泰が好きだ。
本作も一見して彼の作品とわかる長回し、ローアングル、クローズアップを存分に堪能出来るものとなっている。
東映を離れた後、『人生劇場』に始まる文芸大作3本を撮り終え、長年温めてきた彼自身のオリジナル脚本による作品がこちらだ。その東映を離れた後の彼の作品はほぼどれも長尺となっており、こちらも例に漏れず140分超えの長物となっている。観終えて調べて知ったのだがどうやら第1部「野あざみ」と第2部「青い牡丹」の2部構成だったようだ。

主演の真木洋子は体を張った演技を披露してくれており、渡哲也、曽我廼家明蝶、村井国夫、菅井きん他キャストに客演として加藤剛、北大路欣也といった名優が支える構成。

書籍を売って生計を立てる実とミネ夫婦が列車で偶然殺人現場に居合わせる。犯人が隣の席に座ってきたりしたため共犯の疑いでしょっ引かれてしまう。そこから2人の歯車が狂い始め特にミネの生活は暗転する。前半と後半の彼女の変わりっぷりはなかなかだった。途中のストーリーの変化についていけなかったのが惜しかったが冒頭の列車内でのミネの啖呵売のようなキレのある名調子の長回しから只ならぬ雰囲気が漂っていた。その構図がまた決まっていて一気に引き込まれた。いくつか記憶に残るシーンやカットがあったが、中でもくしゃみ我慢の長回しには笑った。個人的に物語の後半よりも前半の方が好みだった。ラストは凄まじかったが長尺になった分トーンダウンは否めなかった印象。やはり東映時代の90分前後で撮っていたからこその演出だったのかも知れない。

それでも未DVD化の貴重な作品なので高画質で観られたことに感謝したい。
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