Jeffrey

ブルー・ジーンズのJeffreyのレビュー・感想・評価

ブルー・ジーンズ(1958年製作の映画)
3.5
「ジャック・ロジエ短編集」

冒頭、愉快な音楽と共にスクーターで2人の男が道を走る。夏のアバンチュール、かわいい女の子達をナンパしようと意気込む、美しい海、風光明媚な土地、海水浴での戯れ。今、男女の夏物語が始まる…本作はジャック・ロジエ監督による1958年、63年のモノクロ短編映画で、この度DVDにて初鑑賞したが素晴らしい。まずは「ブルー・ジーンズ」の話からする。


「ブルー・ジーンズ」

本作は南フランスの海にきらめく青春を、みずみずしく捉えた傑作として有名なロジエの短編映画で、この度DVDのロジエ短編集により初鑑賞したが素晴らしい。相変わらずのアバンチュールを楽しむような作品だ。どうやら1958年トゥール短編映画祭に出品したようで、一躍彼の名を高らしめた出世作のようだ。彼の処女短編は「新学期」と言うもので、55年に製作されているが、こちらはまだ見たことがない。本作は短編第二作品と言うことになる。

この作品の舞台はどうやらカンヌであり、地中海に面したコートダジュール地方の避暑地として19世紀に貴族が別荘を立て始めたことから発展した街が写し出されているようだ。カンヌと言えばやはりカンヌ国際映画祭が有名だろう。ただそれだけではなく他にも美しい海岸沿い等もあるため、カンヌと言う街を色々と見てみたいなと思う。この作品に出てくるアンティーブ通りと言う街中を通るショッピングストリートがあるのだが、そこも魅力的だし他にもクロワゼット通りと言う所もある様だ。後ミディ通り。




さて、本作のあらすじを言うとウェスパに乗ってカンヌの海岸通りを流すルネとダニィ。女の子たちを誘うためTシャツにジーンズ姿で目立つスタイルをしてもなかなか女の子たちは振り向いてくれない。ところが、ある日ビキニの女の子達を年上の男達から連れ出すのに成功する。ガス欠でガソリンスタンドにウェスパを1台残すも、女の子たちを静かな入江のビーチに連れ出せたチャンスは逃さない彼ら、砂浜で思い想いに戯れ、夜はカーラジオから流れるポップソングにのってダンスタイム…と簡単に説明するとこんな感じで、1958年にフランスでロジエが監督した23分のモノクロ映画である。

この作品は全編サイレントで撮影されているようで、音声は後にアフレコをされたそうだ。主人公2人の青年のうちの1人の声を担当したのは同じくフランスの巨匠の作品に多く出演してきた俳優のジェラール・ブランとの事だ。それにしても映画全体的に優雅に満ちており、バカンス時の海岸を男女が歩くシーンだけでこんなにも美しく思える映画はなかなかない。これが後の「オルエットの方へ」につながるのかもしれない。

やっぱりロジエの凄いところは、たわいもないような物語をものすごい重要な映画として捉えている点だろう。だってこのわずか20分程度の短編映画の中身はほとんどが無意味に感じ取れるような事柄ばかりである。たかが女の子をナンパする男2人のたわいもない夏のバカンスを捉えているだけなのに色々と考えさせられる魅力的なものがたくさんある。青春の象徴的なものも入っているように思うし、いつしかのネオリアリズム的な流れも確認できる。

要するに一つ一つのショットが非常に厳密に計算しつくされている。こんなんじゃぁゴダールが大絶賛するのも当たり前だろう。この作品の翌年の59年にはゴダールのフィルモグラフィーの中でも傑作の地位を占める「勝手にしやがれ」が制作され公開に至る。またこの映画に登場する女の子たちのファッションも今では考えられないような風俗的な要素があって、ノスタルジックにも感じてしまう。俺はこの時代を生きているわけではないが…。

もうナンパするような歳では無いが、この映画を見ると1日1日を大切に過ごしたいなと思わされてしまう。反復の性質はこの映画にも見て取れるが、小津安二郎の作品にも精通するところがある。最後になるが、ナンパは決して悪い事ではないね、うん。



「パパラッツィ」

本作は1963年にジャック・ロジエがゴダールの「軽蔑」の撮影風景をとらえた2つのドキュメンタリーの1つで、20分の短編映画だ。このたびDVDにて初鑑賞したが面白い。というか美しい。物語的には主演のバルドーとそれを追うパパラッチの攻防戦を描いている。この作品にはドイツの映画作家フリッツ・ラングのオフが写し出されていたのに驚く。やはりイタリアのカプリ島でのロケーション撮影は本当に美しく、モノクロ映像の中からでも感じ取れる。そこに監督のロジエが取材しに来たとのこと。そういえばブリジット・バルドーをモノクロ映像で見るのは初めてかもしれない…。

ブリジットバルドーの様々な雑誌の表紙が数多く写し出されるショットのループが印象的だ。




「バルドー・ゴダール」

本作は1963年にゴダールの「軽蔑」の撮影風景をとらえた2つのドキュメンタリーのもう一つで、10分の短編映画だ。この度DVDにて初鑑賞したが面白い。物語的にはバルドーと監督ゴダールとの関わりを描いた双子作品で、ドキュメンタリーでありながら、ロジエの代名詞の1つ海と水着の美女とそれを取り巻く男たちを一環したテーマで全編を漂うメイキング的な作品なのだが、従来のメイキング映像とは一線を超えている。

一番重要な被写体であるブリジット・バルドーが徐々に脇に置き換えられてしまうのは笑える。基本的にゴダールがメインになったり撮影風景のメイキングにフォーカスされていく。やはり世界遺産やナポリを見てから死ねと言う言葉がある様に、カプリ島のカンパニア州に行ってみたいよな。
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