こーた

セント・オブ・ウーマン/夢の香りのこーたのレビュー・感想・評価

4.3
主人公チャーリーは盲目の退役軍人フランクの娘夫婦が旅行の間、彼の面倒を見ることに。偏屈な彼の態度と相性最悪っぽいにも関わらず、彼の計画でNY同行することになる。ファーストクラスに豪華ホテル、ディナーと散財しまくるフランク。物語が進むと彼が死のうと思いNYを訪れていたことがわかる。兄家族への訪問は恐らく最期の挨拶のつもりで、それまで気丈に振る舞っていた彼の弱い一面が見え、のちの自殺願望への伏線となっていた。一方学校でトラブルを抱えていたチャーリーは早く帰りたいが、フランクの人柄に徐々に興味を持ち、弱い一面を見て放って置けない気持ちになっていく。そんな2人が衝突するトリガーになるのがまさに拳銃で、眼も見えずロクな友人もおらず人生に希望を持てないフランクと、彼の魅力を知り心の底から死ぬなと思うチャーリーがぶつかり合う。最終的にはチャーリーの諮問委員会にフランクが登場し、彼のスピーチによってチャーリーは救われる。チャーリーは最後までどんなヤツだろうと自分の利益のために友達を売らない。純粋な正義心を持つ彼はまさに主人公だった。
フランクのキャラクターが印象的で、強い人間の様に見えるが人生の失った時間への喪失感が心を蝕む弱い一面にぐっとくる。一見偏屈だけど人の魂を見抜いた言動と、良い魂を持った人間はちゃんと名前覚えていたりするディテールもよかった。アルパチーノは流石の演技力。焦点が合わないハラハラ感を客観的に観るとこうもハラハラさせられるものか。彼あってこその作品…。
そしてガブリエルアンウォー美しすぎ。文字通り物語に華を添えるいい女だった。タンゴはこの映画の象徴的シーンで、盲目の人がタンゴを常人以上に(一歩も枠を出ずに)踊りきる姿は彼の人生も垣間見えて、何より音楽(por una cabeza)がめちゃくちゃ良い。ずっと観ていられた。
他にもフランクがフェラーリを爆速で市街を走らせるシーンなど、意外な掛け合わせで思わず魅入ってしまう脚本・演出によって物語に引き込まれていく。
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