りしゃこ

セント・オブ・ウーマン/夢の香りのりしゃこのレビュー・感想・評価

4.5
感謝祭の間だけ面倒を見るというアルバイトを通して、口が悪くて癇癪持ちの盲目退役軍人フランクと実家が貧しくてエリート校に馴染めきれない高校生チャーリーが出会い、絆を深め互いが互いに希望を与えるようなお話。ポスターからなぜか官能系映画だと長らく勘違いしていたのだけど、めちゃくちゃヒューマンで味わい深くて大好きな映画になった。

登場からアルパチーノがただただ名優様でした。盲目の演技もさることながら、頑固親父の分厚い鎧の下に隠されたあったかくて傷つきやすい部分が滲み出るような演技、あらゆることに絶望した瞳に胸がキュッと締め付けられる。旅の真の計画を打ち明けたのはSOSで、それを出せるのもまたひとつの強さだと思った。

「どうやって生きてゆける?」
「足が絡まっても踊り続けて」
人生とはタンゴだったのか。

高校の懲戒裁判でフランクが繰り広げるスピーチがまっすぐに響いてめちゃくちゃにかっこいい。
「誰よりも無残なのは魂を潰された奴だ。潰された魂に義足はつかない」
「私にはチャーリーの沈黙の正誤は判断できない。だが彼は決して自分の得のために友達を売る人間ではない!それが人間の持つ高潔さだ」
チャーリーの誠実さをこんな風に言語化するフランク、脚本素敵。

最後の姪の子どもたちとの絡みを見て、フランクはこれから楽しく生きていけるんだろうなって微笑ましくなった。チャーリーとの友情、姪っ子ファミリー、お酒、そしてセント・オブ・ウーマンがあればきっと。
(ジャック・ダニエル見たらジョン・ダニエルって言いたくなるね)