おかちゃん

竜二のおかちゃんのレビュー・感想・評価

竜二(1983年製作の映画)
4.1
久し振りに観た…❗️
 これはよくあるヤクザ映画ではない。ドスも出てこない。血のドバーもない。
・映画史的に言えば、「仁義なき戦い」以降の義理も人情も崩れ去った後の「等身大」のヤクザを描く。
 それは、(私はヤクザを擁護したり正当化するつもりは全くないが、)彼らも普通の人間なのである。つまり、すこし視点変えれば女房や子供に人生を捧げるサラリーマンの悲哀となんら変わらない。ここで描かれるのは、そんな市井の人々なのである。
 しかし、主人公は心にある「ある種1つの志(善悪ではない)」によって、建前で動く社会にどこか馴染めず、結局はしのぎを削るネオンの街に戻る。
「人生って、儚いものよな~(私の声)」
その心の苦悩に、生活を共にする女は言葉せずとも察するのである。
・今の時代になると、こうやって筋書を言葉にすると、「なんて草❗️」となってしまう。しかし、映像で語られる想いはなんとも言えず、美しい。心に沁みわたる。
・主演=金子正次は、格好いい‼️また、ドスの効いた厳しい顔の眼光と、気を抜いた顔から溢れる笑顔の眼差しは何とも優しく、その落差は大きく、映画を観る者に強い印象を与える。
・女房=永島瑛子は、弁天様のように柔く艶やかでエロチック。ヤクザの生き方を理解しようと努力するが、一方で娘や幸せな家庭を築こうと踠くのである。

 この二人が、お互いの心を言葉にせず激しく身体を重ね情を交わし気持ちを察するシーンは秀逸だ。大人の情事を感じさせ、ある種ロマンポルノに通づる。

 周りを固める役者陣も、よく頑張っている。アゴ金造は、この後も名脇役になっていく。北公次も、今お騒がせの芸能P
から出たアイドルグループの1人だったが、この作品以降は大人の役者になっていく(キムタクの先駆け的存在)。特筆すべきは、銀粉蝶である。これまた、ヤクザの女役で危険な色香を発している。
 テーマ曲に、「ララバイ(byショーケン)」を使っているが、彼のある種道化的な歌唱法がIronyを更に加速させている。

 これを、インディペンデントの低予算で製作し、大手配給会社をねじ伏せ、ヒットさせた上に、死んじまうなんて、金子正次は何て凄い映画人なんだろう😢RIP