ツクヨミ

竜二のツクヨミのレビュー・感想・評価

竜二(1983年製作の映画)
3.8
言いようのない不安と安定した生活、ヤクザだって人間だ。
公開当時、任侠映画を変えた一本らしい本作。リバイバル上映とのことで見てみた。
まず本作は80年代日本を舞台にしたヤクザ映画になっているが、一人のヤクザをカタギになる物語がなかなかに新しかったらしい。任侠映画では全くの御法度だろうテーマが新しい風を呼んだかの如く、流れるままに主人公竜二の姿を追いかけて行く。
始まりは普通に組のやり手な竜二がめちゃくちゃ昭和暴力男で下っ端とヤクザ家業で荒稼ぎする様をけっこう荒削りな見せ方で映す、だが突然警察に捕まった一件で家族と決別するハメになった竜二の心は突如不安に苛まれることに。カタギになった先輩ヤクザに相談することでいざカタギになる流れなんか意外とアッサリ。しかし刺激強めな世界で生きる竜二の不安ってけっこう誰にも降りかかる寂しさとかの不安なんじゃないかと思うと心に沁みるというかなんか.いいよね。
そして刺激的なヤクザ社会から足を洗った竜二は先輩の助けで酒屋で働き出す、このシークエンスでのささやかな幸せというか特に仕事終わりにビールを飲むとこなんか"PERFECT DAYS"かよとか思ったが前半の振りが効いてめちゃくちゃ沁みるというか。ホームドラマ調のヤクザ映画という謳い文句がすげーしっくりくる味。
だがそんな幸せも長くは続かず、元下っ端たちとの再会や他人と比べてしまう出来事が竜二を新しい不安や焦燥に掻き立てるのがまた秀逸。ヤクザもんは結局ヤクザもんなのだろうか、ラストの決定的な決別の映像力にはすっかり痺れるばかり。でもやっぱりヤクザをカタギに落として我々レベルの悩みで悩ませる脚本がやっぱり好きだったなー。
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