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はだしのゲンのTSのレビュー・感想・評価

はだしのゲン(1983年製作の映画)
3.2
【衝撃の数秒】72点
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監督:真崎守
製作国:日本
ジャンル:戦争
収録時間:85分
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 二ヶ月近く前の、終戦記念日あたりで鑑賞しました。漫画は確か小学生の時に図書室で読んだ記憶がありまして、それはそれは大変恐ろしい印象を抱いていました。このアニメ版が原作の何巻までを扱っているのかはわかりませんが、少なくとも最初の壮絶な原爆投下シーンとその後をおさめているため、アニメながら衝撃度はかなりのものです。特に原爆投下のシーンは小さい子どもがみたらかなり怖いと思われます。

 いわずもがなの名作でありますが、作者の中沢啓治の自伝的な作品であるため、戦争資料としても価値の高い作品であると考えられます。もうほとんど戦争の経験者が生き残っていない中、今作から学べることは何か。かの名作『火垂るの墓』や『この世界の片隅に』などでも、原爆の直接的な描写はしていないため、ある意味貴重だと思われます。

 それにしても、戦争とはいえ四六時中戦争をしているわけではないということが今作からも読み取れます。苦しい生活に変わりはありませんが、空襲警報がいわば災害警報に相当し、鳴れば防空壕に、といった様子です。ただやはり日々の緊張感はただならぬものでしょうし、戦争は最大の人災といっても過言ではありません。

 さて、8月の快晴であった広島市に、悪魔の飛行機がやってきます。たった数秒の出来事をこれ程までに衝撃的に描いているため、脳裏に焼き付きます。中心地にいた人はほぼ即死であったと思われるため、苦痛を感じていないのならば幸いなのですが、それでも惨すぎる。人間というのはここまで非道になれるのかと思ってしまいました。確かにこの原爆投下がなければ戦争はもっと長引いていたという主張もありますが、いかなる理由であれジェノサイドは絶対に許されないこと。とはいえ、こんな歴史を辿ってきた人類も、やはり忘れたかのように現在戦争をしていますから、つくづく人類とは愚かな生き物であると思わされてしまいます。

 その後は地獄絵図ですが、主人公のゲンは何とかたくましく生きていこうとします。絶望しかない世界なのですが、わずかな希望を見つけ出して動いていく。苦しいですが大事な行動であると感じました。原作もいつか読み返せたらなと思いました。あとは実写版があるそうですが、、どこまで期待していいものやら。
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