アキラナウェイ

はだしのゲンのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

はだしのゲン(1983年製作の映画)
3.5
原作は中沢啓治による漫画作品。作者自身の被爆体験が自伝的に描かれ、残酷な描写はあまりに有名。

もう何年も「観なければ」という義務感のようなものがありながら、なかなか観る決心がつかず、この度漸く鑑賞。

広島に住む国民学校2年の中岡元は、1945年8月6日にアメリカ軍により投下された原子爆弾で父、姉、弟を亡くしながらも、身重の母親と懸命に生きようとする—— 。

重たい作品だと覚悟していたが、OPにはアップテンポな主題歌が流れ、原爆投下前のノリは完全に昭和アニメの典型。元と弟進次の無邪気な様子に頬が綻ぶ。

しかし、楽しい雰囲気は一瞬の閃光と共に消し飛んでしまう。

昭和20年8月6日朝。小学校の門の前にいた元は突然の閃光と爆風で気を失ってしまう。偶然にも門の影にいた事で無傷だったが、気が付けば町は一面に焼け野原となり、人々は全身の皮が焼け剥がれた姿で呻いている。

全てが一変し、地獄と化した広島の様子が少年の目を通じて見たままを再現されている。

自宅に戻ってみると崩壊した瓦礫の下で父、姉、弟が下敷きになり、彼らを救う事が出来ぬまま、辺りは火の手に包まれてしまう。

半狂乱となった母は、その後すぐに産気付き、元の妹となる友子を出産。

放射線を帯びた黒い雨が降り、食べるものを探し回る日々。

あまりにも厳しい現実に打ちのめされてしまった。

進次と瓜二つの少年、隆太との出会いは元と母にとってはどれ程の癒しとなっただろう。

驚いたのは、夏に鑑賞してもう何ヶ月も経つのに、元の声が昨日観たのかと思う程に鮮明に記憶されている事。そして、その声を思い出す時、必ず校門の前に立っていた元が一度空に目を向け、飛来するB-29の姿を捉えた瞬間と次の原爆投下の瞬間がセットになって、強烈なインパクトを残した記憶が脳内のシナプスを駆け巡る。

参った。

くだらない作品の事なんて、これっぽっちも思い出せない事もあるのに。

これは生涯忘れられそうもない。