スローモーション男

一人息子のスローモーション男のレビュー・感想・評価

一人息子(1936年製作の映画)
4.2
 小津安二郎、初のトーキー映画

 長野、信州に住む母親と一人息子。お金はないのだが、息子を勉学のため学校に行かせる母親。やがて息子は東京に出て、母親は久しぶりに会いに行く。

 名シーンはいくつもあったが、全体を通してみるとまだトーキーを熟知してないように感じ、退屈に感じてしまうシーンも多かったのです。

 一番良かったのは、稼ぎが悪く嫁さんにまで貧しい思いをしているので、母親が息子を叱るシーン。なんでも東京や人のせいにして、自分で努力しない息子に渇を入れる。それを聞いて嫁さんも号泣。

 そして最後に故郷へ帰った母親が、工場の後ろで悲しい表情を浮かべるシーン。本当は戻ってきてほしいのに、息子を送り出す。そのあと『晩春』で笠智衆演じる父親が、原節子演じる娘を嫁入りに送り出したシーンに似ていました。このなんともいえない悲しみが、私たちの心を揺さぶるのです。

まさに、小津安二郎の作家性が出ていました。