シーケー

青いパパイヤの香りのシーケーのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
4.2
10年くらい前に途中で見るのをやめてしまった映画を最後まで見た。

ベトナムからの移民であるトラン・アン・ユン監督の初長編で、サイゴンの家を再現したセットをフランスに建てて撮影したということで、彼の感じるベトナムの美しさを丁寧に、完璧に作り上げたみたいな映画だった。

ほとんどの場面が家の中で展開されていているけど、半屋外のような建築なので、雨や植物や虫などの湿気のあるベトナムの自然が感じられる。人物の所作や物(陶磁器、料理、洋服)や音風景などを細やかな感性で描くことで、在りし日のベトナムの美しさとして描き出している。フランスのセットなのに。

たぶん物としての主役は透かし窓だろう。湿気の多い熱帯の環境を感じさせつつ、文化的でオーセンティックと言ってもいいような雰囲気を出している。透かし窓の越しの映像が多いのも特徴だ。覗き見しているような視点だったり、主人公に感情移入しきらない効果を感じる。

主人公の健気な感じが現代的でないとか植民地的な視点とか色々思う人はいるとは思うけど、この映画はアンティークみたいな映画として素晴らしいと思った。