ちか

青いパパイヤの香りのちかのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
3.8
日常の中に組み込まれている一つ一つの出来事にしっかりと焦点を当てると
こんなにも美しい世界が隠れていることに気づかせてくれる。
パパイヤの果梗切り口部から滲み出る白い液、雨の音、鳥の囀り、虫や蛙の鳴き声、ムイの無垢な瞳に、熱帯な中で仕事に励む。滴る汗ムイを取り囲む優しい女性達。昼下がりの陽光。
一つの描写が丁寧に時間をかけて映し出されているためストーリーを楽しむ以上に目で見るといった視覚的な楽しさがある。
必要最低限の人工的な灯りしかないためか、自然光で照らされている室内や植物はとても目に優しい。夜は月の光で家の中を撮影していて目を凝らさないと
見えないけれど目を凝らせば、昼間は見えなかったものが見えてくる。楽器の音の耳あたりの良さ。
息子達の残酷性、悪質性(かわいい悪戯の範囲内なのか?エスカレートしたらとんでもない悪質なことしそう、これぐらいならやっても良いんだ!って調子に乗るのが問題。許されるんだ?!)がより女性の健気な姿勢を際立たせている。子供達が歪んでしまうのも、行き場のない苦しみが歪んだ形で表れたのか。この映画に出てくる女性達は基本的に静かで動作が丁寧で口調も穏やか。
建物が美しい、植物が多く、風の通りもいい、採光も取れる。壁だらけで囲まれていない部屋ではないからいい。

ゴッホの名言「美しい景色を探すな、景色の中に美しいものを見つけるんだ」
この映画を見てこの言葉を思い出した。
出来上がってる綺麗、美しいものを求めるよりも自分だけがわかる美しいものを見つけたほうが真に心に残り続ける。
自分が見つけた発見とその記憶

トランアンユン監督の作品はとにかく映像の撮り方が一味違ってうまい。遠くから撮るのでは無く近づいて撮る。顔だけをアップして撮るのでは無く色んなものを近視で撮る。発見。
ノルウェイの森も甘酸っぱいけどフレッシュな懐かしいゆっくりとした映像。
好き〜
ちか

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