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青いパパイヤの香りのaのネタバレレビュー・内容・結末

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

大好き。ずっと見てられる。

お金持ちの家に奉公に出された女の子が、静かに丁寧に日々の仕事をこなして、初恋を成就させる話。
奉公先の家の男たちが総じて甘やかされてて、まったく働かないし意地悪で身勝手で気分が悪かった。おばあさんも「息子が出ていくのはあなた(息子の嫁)のせい」とか言うし、今と比べると一昔前の男女観って国を問わずひどいな。ベトナムが今どうなのかはあんまり詳しくないけれど。

社会に出れば意地悪な人達も心が折れそうな出来事もいっぱいあるなかで、それでも淡々と自分の役割を全うするムイの生きる姿勢がまぶしかった。
従順に労働に従事することを美とする考えを容易に讃美するのは危険なんじゃないかと思いつつ、やはりこういう生き方にひとつの完成形を見てしまう。打算のない静かでひたむきな努力と少しの欲望。

こういう作品を見ると、ひとつひとつのことに立ち直れないくらい落ち込まなくてえらいな…という気持ちになってしまう(自戒)。
パパイヤの種や小さな生き物たちに生命の喜びを感じる優しい心(と余裕)もある。すばらしい…

自分は雰囲気を見せる映画があまり好きではないけど、この映画はすごく映像の美しさに見とれてしまった。たっぷりの陽光と、それを繊細に完璧に通す家の意匠…
東南アジアのお金持ちの家って広くて風通しがよくて本当に贅沢な気持ちになれる。部屋のドアや洗面台といった細かいところのデザインもかわいい。

この地域特有の湿気のせいか、ずっとうっすら官能的。台詞も少ないし、音楽も伝統楽器で不協和音を鳴らし続けているような感じ。寡黙な映画だった。
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