ちぬちぃぬ

青いパパイヤの香りのちぬちぃぬのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
4.2
この映画が語っていることは、その背景にあるものを無視出来ない

ムイは10歳の少女で、親元を離れてある屋敷の使用人として働く
先輩使用人のティーも親切だし、屋敷の奥様も穏やかで優しい
生きていればムイと同じ年頃になる娘トーはもういないけど、この家には3人の息子達がいて次男はムイと年が近く
三男はまだ幼く、突然現れたムイの存在に興味を持ちイタズラを仕掛けて日々遊んでいる
長男はだいぶ年上、長男とムイの接点はあまりないけど…長男の親友でイケメンのクェンにはときめくムイ💕
そりゃね、10歳の少女なら初恋を経験するのは珍しくないし、ガキんちょの次男・三男は眼中にないし、せっせと働くばかりの日常に白馬の王子様が現れたようだよねー✨

“屋敷の庭"
青いパパイヤが実る庭
小鳥、蛙、昆虫たち
この花鳥風月が暮らしに溶け込んで、とても快適で愛しい存在になっている
鳥の鳴き声、蛙の鳴き声、虫の声。。。
ムイは蛙を見つけては観察したり戯れたりする(超羨ましい…カエルいつも居た場所から居なくなったし見かけなくなった)

ムイが小さな生き物と遊ぶ姿と対比になっているのが次男の行動ですね
二人が仲良くなることは無さそうです

そんな平和な環境音が、時々不穏な音にかき消される…警報音とか戦闘機の飛ぶ音

ここはベトナム【サイゴン】(撮影はフランスでセットを組んだもの)サイゴンは1975年から現在、ホーチミン市になっています
この『青いパパイヤの香り』は1951年のサイゴンが舞台だそうです
ホー・チミンがベトナム民主共和国独立宣言をして5〜6年後といった感じかな
この独立宣言の前に140年ほどフランス軍に侵略され入植され日本軍に介入され。。。なかなかの災難だったわけで'51年はもしかしたら少し落ち着いた時期なのかな
でも'65年から今度は米軍が爆撃始めて'73年までベトナム戦争だからホントに束の間ですね

“家父長制"
典型的家父長制を観ることができるこの作品
家父長制で誰が幸せになっただろうか

時代が10歳のムイから20歳のムイになった時、クェンの婚約者はかなり良家のお嬢様のようだった
クェンの家も(長男の嫁の話では)裕福で
この方たちは恋愛結婚ではなく、たぶん釣り合う家柄同士で取りまとめられた縁談なんでしょう。。。少なくともクェンは彼女にほとんど?あんまり興味が無さそうだった
彼女の方はイケメンのクェンに惚れてたみたいだったけど…いや…なんか焦ってるように見えるところもあったかな
必要以上に誘惑するのは、自分に振り向いて欲しくてでしょうね

これも家父長制のひとつですね
日本だったら武家の娘は武家と婚姻しか無いってね
もうそんな御家柄もクソもない現代でもなんか続いてますけど〜



ちょっと個人的な話ですが、私も親におかしな扱い受けてました
まず生まれてきて「男」じゃなかったことに文句言われて、母親は私を祖母に預けっぱなし…母2:祖母8ぐらいかな
弟が生まれてしばらくしたら、弟のためにも私も一緒に暮らすことに
でも〜ホントに労働力の一部かよって思ったよ(母は普通にちゃんと家事とかします)
近所とか同じくらいの歳頃の友達は全然そんな大変な労働させられてへんやん!ってなったし、まず弟はなんもせんでええんかい⁈ってなるし
父などは「できたら奉公に出したいところや」って言ってだんだよ何時代だよw
だから、時代が違えば絶対に奉公に出されてたと思いますわ〜(´ω`)


さて映画の話に戻ります
"赤いルージュ"
ずっとオシャレしたりメイクしたり
二十歳の女性ならやりそうなことも
ムイには高嶺の花だったし
そんな生活したことなかったよね…
でもクェンの婚約者の持ち物と思われる赤いルージュを見つけて。。。
初めて自分の唇を染める

少女でもなく使用人でもないムイになった瞬間ですよね

だがしかし、わたしは不満である
確かにクェンはもう既にムイが自分のことを好きって知ってたかもしれんけど
えー🤨そんな「夜這い」みたいな風に二人はくっつくのか〜と、ちょっと思いました

まぁ現実問題、ムイには学習機会が与えられず、もしかして文字も読めなかったかもしれない
そして高学歴のクェンは上手に教えるんでしょうけど
【男性が女性を教育する】は"男社会"の定番?定石?なんつうたらええんか
ホントはね、ただ「知ってる者が知らない者に教える」公平に知識のシェアができれば良いので
是非、女性からも学んで欲しいですね

あー素晴らしい映画でした✨