そ

青いパパイヤの香りのそのネタバレレビュー・内容・結末

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

「覗き見はよくないよ」
「仕方ない」

ベトナムに行くので見た。
めちゃくちゃ濃い内容。音楽がいい仕事しすぎ。でもフランス映画の文法がわからないと理解できない部分もあるのかも。

【思ったこと】
まず第一にめちゃくちゃ表現が上品。多く指摘されているように、やはり隠喩がとても綺麗。性愛を直接的な映像として描けないというベトナム社会的な事情もあるのかもしれないが、それにしてもメタファーによって分りにくくなることなく、成り行きを表現しているのがすごいと思った。
それから、「緊張感」と「垣間見」がかなりテーマになっている気がする。例えば冒頭、アリを嬉しそうに見る幼いムイと、退屈そうに蝋燭で殺す次男。ここに、使用人と主人という身分間の緊張関係が表れている。それを窓や格子を通して撮り続けることで、受け手は緊張関係を眺める第三者として物語に直面している。ここにはトラン・アン・ユン監督のフランス越僑としての複雑なアイデンティティが反映されている気がする。個人的な解釈としては、義母をずっと追いかけてきたあのおじいさんこそが監督なのではないかと思う。かつて愛した義母=祖国ベトナムに近づけず、長い間窃視するしかない監督の内面を、描いているのではないか。ただ、垣間見た瞬間に窃視が終わってしまった=義母が死んでしまった理由はよくわからない。
ちなみに、部屋の中を映す長めの水平トラッキングショットは見ていて驚かされるが、インタビューによると(頻繁に影響が指摘される小津安二郎ではなく)溝口健二の影響らしい。カメラワークがとてもすごい。また同じインタビューの中で、「女性の献身さというものを、ぜひこのフィルムを通して描きたいと思い、女性たちが家族に尽くしてくれたそういう時代を描きたいと思った」と語っているが、皮肉にもこの時代——つまり抗仏救国戦争期——のベトナムという国で、女性に生まれることの生きづらさをぼくは感じ取ってしまった。
ソース→
< https://asiawa.jpf.go.jp/culture/features/f-ah-tran-anh-hung/ >
そ