ダイナ

コラテラルのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

コラテラル(2004年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。

主人公はタクシー運転手のマックス、ある日客として乗せた男が実は殺し屋ということが発覚、不幸にも運転の腕を買われてしまい、そのまま殺しの仕事の足役として採用されてしまう・・・

この映画、マックスは殺し屋の仕事に巻き込まれてしまう不幸な男に見えるが、彼にとってこの映画で描かれる一日はプラスの側面もあるのではないだろうかと鑑賞後考えてしまった。

マックスはリムジン運転手という夢を持っているが、必死に叶えようとしている風ではない。序盤で女検事の客を乗せた時、言い様によってはより多くの料金をせしめることができたにも関わらず、客の利益(料金、到着の速さ)を考えていた所から、マックスの人の良さ、また金銭に執着しない=夢を全力で追わない男という印象を受けた。

殺し屋はヴィンセントという男。演じるのはトム・クルーズ。白髪も似合ってはいるがもう少し顔老けた方がマッチしそう。黙々と仕事をこなす冷酷な男。そのため障害が立ちふさがると手段を選ばない。マックスが上司にいびられていたら助言して切り抜けさせたり、母親の見舞いの習慣を聞けば、母からの疑りを消すために一緒に見舞いに行ったり、邪魔とあれば刑事も簡単に射殺したりする。(このシーンでヴィンセントに対する実は良い奴?って期待は完全に失せました。)

そんなヴィンセント、映画の中でマックスに「環境に適応しろ」だとか「お前の人生は今後後悔続きだろうな」みたいなことをズバズバと言うわけです。半ば脅迫じみた手伝い運転させといてどの口が言ってるんだと反論したくなるが、作中のマックスの表情や仕草から、ヴィンセントの発言が完全な的外れでは無い、非道な殺し屋の言葉にどこか納得してしまえる気持ちもどこか残っていそう。

マックスは序盤では上司にいびられる気弱な男であったが、中盤~後半に至っては人が変わったように自分の意思で状況を切り抜けるように行動していく。殺しデータのお使いの下り、ヴィンセントになりすまして彼の口から「適応しないと」って発言を聞いた時、ここで彼のスイッチが切り替わったと思った。(のちの事故はネジが外れた風にも見える笑)最初から面白かったけどこの辺りから加速度的に盛り上がってきなと個人的にワクワクした。

最終的に、この二人は女検事という対象を巡って対峙することになる。序盤のマックスと比べて、自分の命を顧みず人を助けに行く姿は、ヴィンセントへの怒りが動機の一要素噛んでいるとは思えるが、個人的にはヴィンセントのマックスへのアドバイスが動機に繋がったようにも思えた 。最後には悔いなく自分の正しい選択を命がけで選ぶ男へと成長できたのではないだろうか。この成長要素こそがマックスが手にした最大のプラス要素ではないだろうかと思った。勝手な妄想だが、あの後マックスは夢へ全力疾走してくれていると嬉しい。(殺し依頼サイドの報復とか怖いけどね~)
ラストの電車内の姿、序盤で出てきたエピソードが重なるのもいい演出ですね。

気になった点
ヴィンセントの性格、仕事ぶりからして、ジャズ奏者がクイズに正解しても生かす気はなかったんだろうなと思った。かといって仕事の最中遊びをする男にも見えなかったので、なぜあそこでクイズを出したのかが気になった。クイズに正解出来たら生かしてやるというやり取りをマックスに見せることで、情があることを見せマックスの懐柔を企んでた?

そして一番印象に残っているシーン
殺し屋データのお使いの後、次の目的地への移動中、マックスがふと減速をかける。ヴィンセントが前方に目を向けると一匹の犬(狼?)が車の前を横切る。ここでスローテンポでロックなBGMが流れる。でその間二人はずっと無言。このシーンが何を意味しているのかが分からないがとても印象に残った。ヴィンセントとマックスがまだ互いにバチバチ対立する前の所なので、ここの静かな場面が二人の最後の穏やかな時間であり、またBGMにより「ここからどんどん血流れますよ」っていう制作側の演出なのかと思った。(深読みだなこれ)

トム・クルーズの悪役という姿は新鮮だった。また殺し屋と偶然行動を共にすることになったタクシー運転手の二人による奇妙な利害関係(途中からマックスは害しかなくてかわいそうだが)から、お互いのプライド、信念の闘いはとても見ごたえがあり、鑑賞後は良い余韻に浸れた。
ダイナ

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