★1986年に続き2回目の鑑賞★
アル中夫婦二人の行く末というシチュエーションでは話の振れ幅はかなり狭まるのだが、それでも本作の、特に中盤以降の緊迫感は半端ない。
その原動力は間違いなくジャック・レモン。パチーノやデ・ニーロとは全く異なる、普通のサラリーマンを演じると、今の時代までを通じてさえ右に出る者はいない名優と信じているレモン演じる、どこか内面に弱さを持ったユーモラスでもシリアスでもある主人公ジョーに対する感情の移入に抗いようがない。
また、レモンの熱演に隠れているが、本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされたリー・レミックの名演も忘れ難い。「オーメン」の母親役で有名な彼女だが、実は実力派で演技はしっかりしていて、また個性的で美しくも可愛くもある顔つきも魅力的。
ストーリーは一言で片づけられてしまうほど単純だが、この二人の主演により、アルコール依存になる過程やアル中の恐ろしさを痛いほど感じさせる、非常に観応えのある作品。
よくこの時代にこのラストで締めたなという哀しい内容と、映画内容に非常にマッチする哀愁と愛情を感じさせるヘンリー・マンシーニの名曲「酒とバラの日々」のコラボレーションが深い余韻を残す名作。