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祇園囃子のほーりーのレビュー・感想・評価

祇園囃子(1953年製作の映画)
3.8
『祇園の姉妹』で芸妓おもちゃの叫びから十七年。敗戦を経た戦後の祇園界隈の女性たちを再び描いた溝口映画。
 
劇中の台詞にも登場する基本的人権というのができて、以前のような自分の意志で生きていくことが許されなかった舞妓たちの境遇も表面上だいぶ改善されたかのように見えるが本質はやっぱり変わっていない。
 
『祇園の姉妹』では姐さん芸妓が梅村蓉子、妹芸妓を山田五十鈴が演じていたが、本作では姉が木暮実千代、妹を本当に若い若尾文子が演じている。
 
いずれも姉が古い慣習の中で生きる女性、妹が若いだけあって現代的な考えの女性なのだが、梅村蓉子は慣習に対して疑わない本当の古風な女性だったが、本作の木暮は古い慣習は理解していてもそれを若い世代にも押し付けることに抵抗のある女性として描かれている。
 
本作は若尾文子が舞妓志願するところから物語がはじまる。一年間の舞妓修行を経て初めてのお座敷を務めるが、そこで車両会社の重役(演:河津清三郎)の目に留まる。
 
河津は取引先の役所の課長(演:小柴幹治)を接待して大型案件の受注を画策していた。課長さんの方は木暮実千代の方に御執心と見えて、木暮に課長と付き合うように懇願する。
 
やがて河津は木暮と若尾を連れて東京を訪れる。先に東京で待っている課長と木暮を引き合わせ、自身は若尾に手を出そうと企んだからだ。
 
そこで事件が発生する。河津は若尾を無理やり押し倒してキスしようとしたが、拒んだ若尾が河津の舌を噛み切ってしまう。
 
この頃の若尾文子ならわしも舌噛まれてみたい(゜o゜(☆○=(-_- )゙
 
という訳で二人を取り巻く状況がこの一件を契機にがらっと変わってしまう。河津や部下役の菅井一郎、そしてお茶屋の女将である浪花千栄子に二人は翻弄される。
 
特にこの作品でブルーリボン助演女優賞を獲得した浪花千栄子が印象的で、祇園界隈の顔役でもあるこの女将役に凄みを感じた。

■映画 DATA==========================
監督:溝口健二
脚本:依田義賢
企画:辻久一
音楽:斎藤一郎
撮影:宮川一夫
公開:1953年08月12日(日)
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