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カジュアリティーズのGTのネタバレレビュー・内容・結末

カジュアリティーズ(1989年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

 ベトナム戦争中に起きた実際の事件をもとにした映画。兵士が村の娘を攫い、強姦したうえ殺害するという非常にショッキングな内容の映画だ。
 映画の冒頭から、その後の悲劇を予見するような不穏な空気が漂う。兵士たちはいつ死ぬか分からない危険な状況に恐怖し、また現地の村人たちがベトコンに協力していることに怒りを爆発させる。彼らの現地人への蔑視は凄まじく、その中で現地の人との交流を重要視するエリクソンは、唯一の良心ともいえる存在だ。
 伍長であるブラウンが殺害されたことが契機になって、いよいよ隊の暴走が始まる。村に忍び込み若い娘を拉致。靴も履かせないまま長期間歩かせたり、猿轡をはめ手を縛ったりと虐待を繰り返す。遂には強姦に及び、挙げ句の果ての射殺。個人的には、クラーク伍長を演じた方の、ガンギマリ演技に拍手を送りたい。戦争によって「完全にイカれてる」顔だ。
 義憤に燃えるエリクソンだが、上層部は「面倒になるから」と取り合わないうえ、口封じのために手榴弾で殺害されそうになるなど、戦場ゆえの理不尽が襲いかかる。だが最終的に、彼らの悪行は表沙汰になり、彼らは裁かれる。
 実際にあった出来事だから仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが、少し安直な印象もある。エリクソンは真っ直ぐな性格で「善」を象徴するようなキャラクターなのに対し、ミザーブ軍曹ら加害者たちは、完全なる「悪」として描かれる。だが戦場という狂気の場所においては誰もがそうなりうる可能性もあり、彼らをこうした凶行に駆り立てのも、ひとえに生きるか死ぬかの極限の状態が故に他ならないのではないか。エリクソンがそうした狂気とは全く無縁で、ひたすら正義のみに徹しているところに、どうにも嘘っぽさを感じてしまわなくもない。
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