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マッケンナの黄金のpsychedeliaのネタバレレビュー・内容・結末

マッケンナの黄金(1969年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 アパッチ族の隠し金山への地図を手に入れた保安官。彼と因縁のあるお尋ね者の一党がその地図を狙うが, 保安官は既に焼き捨てた後だった。悪党たちは保安官を捕らえ, 金山の場所へと案内させるのだった。その道中, 金を狙う別の者たち(お尋ね者ばかりでなく, 町の商人やトレジャーハンター, 果ては狡猾な騎兵隊軍曹に至るまで)と彼らは邂逅し, 時に戦い, 時に協力して道を切り開いていく。そしてついに金の谷に辿り着いた時, 一行は金を巡って血みどろの仲間割れを始める...

 J・リー・トンプソンが巨匠だった時代の最後期の作品。『北西戦線』や『ナバロンの要塞』といった大作を何本もモノにしてきた名匠だけに, 他に類を見ないスケールの大きな冒険西部劇となっている。
 登場人物たちは一人残らず黄金に良心を売り渡しており, 赤裸々な欲望が交錯するその人間模様は, 恐らく同時期にヨーロッパを席巻していたマカロニウェスタンに影響されているのだろう。最初は, インディアンと, オマー・シャリフ演じる何処の国の人間か分からないお尋ね者だけが悪人に見えて, 「なあんだ, 結局アメリカ人だけが善人なのか」と思っていたのだが, 騎兵隊の軍曹が部下を殺してまで黄金を持ち逃げしようとしたり, ヒロインまでもが欲に負けて「黄金があれば広い牧場が買えるわ」と目を輝かせたり, アメリカン・ニューシネマ前夜の映画としては結構攻めてます。J・リー・トンプソンはアメリカ人じゃないから, アメリカ的正義みたいなものにあまり拘りがないのかもしれないけど。
 演出は, 正直言って『北西戦線』や『恐怖の岬』の頃よりキレが悪くなってきています。「コンドルは誰が死ぬかを知っている〜」みたいな歌詞のカントリーソングをBGMに, 砂漠を進む一つの人影とコンドルの飛翔を対位法的にカットバックするオープニングは, 似た構図が冗長に続くため退屈する。また, 一攫千金を狙う海千山千の冒険者を何人も出しておきながら, そのうちの殆どをたいした見せ場もないまま退場させてしまう。勿体無いことこの上ない。欲に塗れた登場人物たちの人物像も, マカロニウェスタンのはちゃめちゃな悪役に慣れて不感症になっている私にはいまいちインパクトが無かった。この辺り, 80年代になってブロンソンのジャンク映画を連発する晩期の兆候が既に表れているのかもしれない。
 それでも, 古き良きハリウッド大作西部劇として, J・リー・トンプソンの巨匠期の最後期の名作として, 見る価値は十二分にある。できれば映画館で見たいところだが, いつ廻ってくるか分からないので, 先にDVDで見ておいても好いだろう。ミステリー要素があるわけではないので, 劇場で見るのを二回目にしても, さほどマイナス要素にはならないのではないかと思われる。
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