びこえもん

ウルガのびこえもんのレビュー・感想・評価

ウルガ(1991年製作の映画)
3.8
幼少期以来十数年ぶりのVHSレンタルで鑑賞。この映画はソ連映画(フランス合作)ですが、基本的にはモンゴルを中心に描いた作品です。
まずは何と言っても果てしなく広がる大草原の景色が本当に素晴らしい。願わくばHDリマスターされたクオリティで観たいところ。

蒙古であって中華でなく、中華人民共和国であってモンゴル国でない、内モンゴル。工業化した都市文明を支配する中華と、草原で遊牧民の伝統を今に伝える蒙古。ひとつの地方を舞台に、似ているようでまるで異なる2つの民族の対比と同化吸収を描き、そこにシベリアから来たロシア人労働者を介在させることで、蒙・中・露という三者三様の北アジアの様相を象徴的に描き出しているように感じました。更に言えば、モンゴル人の中でも遊牧民として生き続ける者、都市文明に適応した街の人間、そして中華民族にほぼ同化された中国語話者…というグラデーションがついており、「近代化し、工業化し、そして中国化してゆく内蒙古」の有様が描き出されています。

ミハルコフの作品を観るのはこれが初めてですが、今まで自分が観たことのあるタルコフスキーやズビャギンツェフなどのソ連/ロシア映画と比べれば、幾分コミカルで相応に盛り上げのある演出がされています。序盤のトラックのシーンの流れはエンタメとしてかなり上手いなと感じました。

後半は少々急展開が多く、解釈しにくい描写などもあり振り回される所がありますが、テーマ性や映像美からいって間違いなく良い映画ではあったと言えます。

死ぬまでに一度何もない大草原の真ん中にぽつねんとあるゲルに泊まって馬を乗り回してみたい。馬の乗り方もわかんないけど