一人旅

ウルガの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

ウルガ(1991年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

第48回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。
ニキータ・ミハルコフ監督作。

ロシア人セルゲイと内モンゴル自治区に暮らすモンゴル人家族の交流を描く。
遊牧民であるモンゴル人の素朴な生活が印象的だ。飼育する羊を自らの手で屠殺しその日の夕食にしたり、馬に跨り草原を疾走する。彼らは生きていく上で必要最小限の物だけを所有する。物質的に充実した生活を送っているわけではないが、広大な草原にポツンと佇む小さなゲルの中は家族の温もりで満ちている。娘が演奏するアコーディオンの音色が家族にとっての唯一の娯楽で、セルゲイを交えて家族揃って演奏に耳を傾けるシーンは幸福そのものだった。
そして性の持つ意味。夫は妻と性交したいことを正直に打ち明け、草原の小高い丘で交わる。野蛮さや汚らしさではなく、人間の根本的な歓び、生き方を彼らは自然と実践しているに過ぎないのだ。
文明の発達した現代社会で失われてしまった人間古来の生き方が、彼ら遊牧民の間では未だ息づき続けている。生きる上で洗練は飾りに過ぎず、素朴こそが人生の本質なのだ。文明の無機質な物質群が彼らの生活を少しずつ侵蝕していることを象徴するラストカットが切ない。
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